2023年 | プレスリリース?研究成果
小惑星リュウグウでみつかった窒化した鉄の鉱物 ―太陽系の遠方から辿り着いた窒素に富む塵―
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科地学専攻
教授 中村 智樹(なかむら ともき)
大学院理学研究科地学専攻
助教 松本 恵(まつもと めぐみ)
研究室ウェブサイト
【概要】
太陽から遠く離れた場所で生まれた氷天体や彗星にはアンモニウム塩のような窒素化合物が大量に貯蔵されています。このような窒素を含む固体は生命の材料物質としてとても重要だと考えられていますが、地球軌道の地域に輸送される証拠は見つかっていませんでした。本研究では、地球の近くに軌道をもつ小惑星リュウグウの砂を電子顕微鏡で調べ、砂のごく表面が窒化した鉄(窒化鉄:Fe4N)に覆われていることを発見しました。窒化鉄は、磁鉄鉱と呼ばれる鉄原子と酸素原子の鉱物の表面で見られます。我々は、氷天体からやってきたアンモニア化合物を大量に含む微小な隕石がリュウグウに衝突して、磁鉄鉱の表面で化学反応が起こり、この窒化鉄が形成したと考えました。小惑星の表層では、太陽から吹くイオンの風(太陽風)の照射などによって磁鉄鉱の表面から酸素が失われていて、アンモニアと反応しやすい金属鉄がごく表面に形成しています。このため、磁鉄鉱の表面ではアンモニアに由来する窒化鉄の合成が促されたと推測しています。この微小隕石は太陽系遠方の氷天体からやってきたかもしれず、これまで気づかれてきたよりも多くの量の窒素化合物が太陽系の地球付近に輸送されて、生命の材料となった可能性があります。
本成果は、京都大学白眉センターの松本徹 特定助教、理学研究科の野口高明教授、三宅亮准教授、伊神洋平助教、化学研究所の治田充貴准教授、および国際的な共同研究者のグループによって行われ、2023年11月30日に英国の国際学術誌「Nature Astronomy」にオンライン掲載されました。
(URL: https://www.nature.com/articles/s41550-023-02137-z)
図 (A) 小惑星リュウグウの試料に含まれる磁鉄鉱粒子。天体の中を存在した水の中で成長したため、丸い形をしている。磁鉄鉱の表面はとても多孔質であり、この特徴は宇宙空間にさらされた表面にだけ見られる。
(B) 丸い磁鉄鉱の断面画像。元素の分布を色付けしている。表面に鉄と窒素に富む層が見られる(緑色の場所)。窒化鉄はごく表面の数十ナノメートルの厚みを覆っている。
「はやぶさ2初期分析チーム」につきましては、
?「はやぶさ2」初期分析チーム
2021年6月より試料の分析開始(https://www.
?リュウグウはイヴナ型炭素質隕石でできている(https:/
?炭素質小惑星リュウグウの形成と進化:
?小惑星リュウグウ試料の希ガスおよび窒素同位体組成―
?「はやぶさ2」
?日焼けで隠された水に富む小惑星リュウグウの素顔(https
?
?小惑星リュウグウ試料中の黒い固体有機物(https://
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科地学専攻
教授 中村 智樹(なかむら ともき)
電話: 022-795-6651
Email:tomoki.nakamura.a8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院理学研究科地学専攻
助教 松本 恵(まつもと めぐみ)
電話: 022-795-5789
Email:m_matsumoto*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
電話:022?795?6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)