2023年 | プレスリリース?研究成果
メタマテリアルで遮熱効果と5G/6G用電波の透過を兼ね備える透明な窓を開発 - 猛暑での室内や車内でエアコンの消費電力削減に期待 -
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科ロボティクス専攻
教授 金森 義明
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 可視波長を透過するが大気の温度を高める近赤外波長は反射し、5G/6G(注1)通信帯の電波を透過する遮熱窓を開発しました。
- 可視光、近赤外光、5G/6G通信電波という波長帯の異なる電磁波の反射?透過を同時に制御できるメタマテリアル(注2)の設計と製作に成功しました。
- 建材?自動車用遮熱窓への応用により、室内や車内での熱中症の発症や夏季の電力需給の逼迫などの社会課題の解決が期待されます。
【概要】
カーボンニュートラルを目指し、日本や欧州を含む先進国では環境規制が強化され、さらなる省エネルギー対策が求められています。一方、地球温暖化による気温上昇が世界各地でみられ、特に夏季には室内空調のためますます電力が多く消費される傾向にあります。解決策の一つとして、建物や車等の窓に遮熱機能をもたせることが考えられますが、一般的に普及している遮熱ガラスは5G/6G通信帯の電波を遮断するため無線でのスマホやパソコンの利用に影響が出るという課題があります。
東北大学大学院工学研究科の金森義明教授らの研究グループは、ナノメートルサイズの周期構造で構成されるアルミ製遮熱メタマテリアルを開発し、熱となる近赤外波長は反射するが5G/6G通信帯の電波(可視波長)は透過する、透明な遮熱窓の基材を作製することに成功しました。
建材?自動車遮熱窓への応用により、室内や車内温度の上昇による熱中症の発症、夏季の電力需給の逼迫などの社会課題解決への貢献に期待できます。昨年、設置した国内初のメタマテリアルを専門とする研究センター「メタマテリアル研究革新拠点」(注3)を基盤に実装化に向け、研究をさらに加速させていきます。
本研究成果は、2023年9月25日付で、米国光学会誌Applied Opticsに掲載され、Editor's Pickに選ばれました。
図1. 開発した透明遮熱窓の利用イメージ。遮熱メタマテリアルは、可視波長を透過し、熱となる近赤外波長を反射する特性をもつため、遮熱機能をもちながら5G/6G通信帯の電波は透過する窓に応用できる。
【用語解説】
注1 5G/6G:
?第5世代移動通信システム(5G通信)
2020年3月からサービスが開始された、一世代前の4Gと並ぶ現行の通信規格。4Gと比較して、高速大容量、多数同時接続、超低遅延といった特徴がある。さまざまな電子機器がネットワークに接続されるようになる。
?第6世代移動通信システム(6G通信)
現行の携帯電話で使われている 4G、5Gに続く無線通信システム。2030 年代の商用化が見込まれている。通信速度は5G の 10 倍以上の毎秒 100 ギガビット級(ギガは 10 億)が想定されている。高解像度の3D映像を触覚情報などと合わせてリアルタイムで送受信できるようになる。医療分野では遠隔での治療や診察、教育分野では臨場感のあるリモート授業が実現する。
注2 メタマテリアル:
制御の対象とする電磁波の波長より小さな単位構造で構成され、自然界にはないような電磁波応答を示す人工光学物質。空間的な局在電場モード(光の状態密度)を自在に設計し得る最小の光共振器とも言え、電磁波の応答特性は主にメタマテリアルの形状で決まる。光共振器の設計次第で実効的な屈折率を自在に制御できる。要求に応じた屈折率を持つ光学材料を設計に基づき人工的に実現でき、負の屈折率、透明マント(クローキング)、完全レンズなどの実現可能性が示されている。
注3 研究センター「メタマテリアル研究革新拠点」:
2022年6月1日設置。拠点長は東北大学大学院工学研究科 教授 金森義明。
https://web.tohoku.ac.jp/kanamori/0meta-ric/index.html
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
教授 金森義明
TEL: 022-795-4893
E-mail: ykanamori*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科
情報広報室
担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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