2023年 | プレスリリース?研究成果
相変化メモリの消費電力二桁減につながる新材料を発見 - 高速化が進む演算速度に追従する半導体メモリ用材料として期待 -
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻
教授 須藤 祐司
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 二次元層状物質(注1)であるテルル化ニオブ(NbTe4)がアモルファス/結晶相変化(注2)により大きな電気抵抗変化を示すことを発見。
- 従来の常識を打ち破る低融点かつ高結晶化温度の実現により、実用のGe-Sb-Te化合物(GST)(注3)よりも約二桁の動作エネルギー低減が可能。
- 省エネルギー、高速動作かつ高温使用を可能とする不揮発性メモリ(注4)の新材料として期待。
【概要】
Society5.0(注5)の実現およびその発展に向けて、省エネルギーや高速動作を実現する半導体メモリ素材の開発が求められています。
東北大学材料科学高等研究所の双逸助教と同大学大学院工学研究科の須藤祐司教授は、同大学の金属材料研究所および未来科学技術共同研究センター、産業技術総合研究所、慶應義塾大学の研究者らとともに、二次元層状物質であるNbTe4が、アモルファス/結晶相変化により、一桁以上の大きな電気抵抗変化を生じることを発見しました。NbTe4のアモルファス化温度(=融点)は約450℃と極めて低いにもかかわらず、その結晶化温度が約270℃と高いことが分かりました。このことはNbTe4がアモルファス化しやすく、かつそのアモルファス相が熱的にも安定であることを意味します。さらにアモルファス/結晶相変化が数十ナノ(ナノは10億分の1)秒といった極短時間で生じることを実証しました。
高い結晶化温度でかつ低い融点を両立し、高速相変化を示すNbTe4は、省エネルギー、高速動作かつ高温使用を可能とする不揮発性メモリの新しい材料となることが期待されます。
本成果は、2023年 6 月20 日にドイツの科学誌 Advanced Materialsのオンライン版で公開されました。
図1. 様々な二次元層状物質の融点と結晶化温度の関係。本成果のNbTe4は、従来の二次元層状物質に比較して極めて融点が低いにもかかわらず、200℃以上の高い結晶化温度を維持。
2D TMT:二次元遷移金属テトラカルコゲナイド (2Dimensional Transition-Metal Tetrachalcogenide, MX4, M:遷移金属元素, X: カルコゲン元素)
2D TMD:二次元遷移金属ダイカルコゲナイド (2Dimensional Transition-etal Dichalcogenide, MX2, M:遷移金属元素, X: カルコゲン元素)
【用語解説】
注1 二次元層状物質
次世代の電子デバイス材料として注目を集めている物質。原子層が積層して結晶構造を構成している。グラファイトは代表的な二次元層状物質である。
注2 アモルファス/結晶相変化
原子配列が不規則で結晶構造のような規則性をもたない状態をアモルファスといい、アモルファス-結晶と状態が変化することを指す。
注3 Ge-Sb-Te化合物(GST)
GSTは、アモルファス相と結晶相間の相変化に伴って大きな光学反射率変化を示すため、PCRAMに先立って光記録ディスクに実用されました。GSTは、相変化に伴い大きな電気抵抗変化も示すため、PCRAM用材料としても実用されています。
注4 不揮発性メモリ
コンピュータの電源を切ってもデータ(情報)を記録保持しているメモリのことを言います。
注5 Society 5.0
政府が第5期科学技術基本計画で提唱した、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
助教 双 逸
TEL:022-795-7339
E-mail: shuang.yi.e3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院工学研究科
教授 須藤 祐司
TEL:022-795-7338
E-mail: ysutou*material.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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