2023年 | プレスリリース?研究成果
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の曲げ振動発電?蓄電でセンサ情報のワイヤレス送信を実現 ― スポーツ用品や航空?宇宙機器のIoT化に期待 ―
【本学研究者情報】
〇大学院環境科学研究科
教授 成田史生
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 圧電材料のナノ粒子(圧電ナノ粒子)を分散したプラスチックを炭素繊維強化プラスチック(CFRP)上に積層することで、強度の向上と電力の安定確保を実現しました。
- 曲げ振動を受けるCFRPを用いてLEDを点灯させ、センサ情報を電源フリーでワイヤレス送信することに成功しました。
- CFRP製のスポーツ?レジャー製品、航空?宇宙システムで利用されると期待されます。
【概要】
モノのインターネット(IoT)(注1)センサの電源として環境発電(注2)の利用が期待されています。環境発電を行う材料のうち、圧電材料は環境中に存在する未利用の運動エネルギーを電気エネルギーに変換します。航空機?宇宙船などの移動体に生じる振動を利用し、IoTセンサを駆動できれば、外部電源や電池交換が不要になり、航空?宇宙システムの自律性と信頼性が向上します。
東北大学大学院環境科学研究科の成田史生教授(工学部材料科学総合学科兼担)のグループは、英国リーズ大学 のYu Shi教授と共同で、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)(注3)電極からなる新しい圧電振動発電デバイスの開発に成功しました。CFRP電極は優れた導電性を有し、圧電材料である圧電ナノ粒子をプラスチックに分散した圧電ナノコンポジットの機械的特性を劇的に向上させ、共振時の出力電力を安定に確保することができます。
今回開発した片持ちはり(注4)形状の炭素繊維強化圧電振動エネルギーハーベスタは、固定端に0.05 mmの変位振幅を与えた場合に約90 mW/cm3 の高出力電力密度を示し、LED電球を容易に点灯させることができます。また、この技術はワイヤレス通信システムの電源として大きな応用可能性を示し、IoTセンサ分野はもちろん、スポーツ?レジャーや航空?宇宙の分野で、CFRPの新しい展開が期待されます。
本研究成果は2023年6月13日、ナノテクノロジーとエネルギーの専門誌Nano Energyに掲載されました。
図1. 圧電ナノコンポジット/CFRP積層材料と圧電ナノ粒子。
【用語解説】
注1 モノのインターネット
パソコンやスマートフォン、プリンターなどといったIT関連機器だけでなく、家電をはじめとするあらゆる「モノ」をインターネットと接続することで、より利便性を高めようとする概念。
注2 環境発電
エネルギーハーベスティングとも言う。周りの環境から微小なエネルギーを収穫(ハーベスト)して電力に変換する技術。
注3 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
炭素繊維(カーボンファイバー)を強化材として加えたプラスチック。プラスチックの軽量、高い成形自由度といった特徴に加え、炭素繊維のもつ高剛性?高強度な特性も併せ持つ。
注4 片持ちはり
曲げ変形を受ける細長い棒で、一端が固定され他端が自由な状態にあるもの。この構造はマンションのバルコニーや電車のシートなどに用いられている。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院環境科学研究科
教授 成田史生
TEL: 022-795-7342
E-mail: narita*material.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院環境科学研究科
情報広報室
TEL: 022-752-2241
E-mail: kankyo.koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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