2023年 | プレスリリース?研究成果
トンガ沖海底火山噴火がもたらした電離圏の穴 ~最先端の観測から見えた地圏と宇宙圏のつながり~
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科地球物理学専攻
教授 土屋 史紀(つちや ふみのり)
〇大学院理学研究科地球物理学専攻
准教授 熊本 篤志(くまもと あつし)
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
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南太平洋トンガ沖の海底火山噴火後に、同心円状の気圧波の到来に関連した電離圏注1)電子密度の不規則構造の観測に成功。
- 通常よりも1~2桁も電子密度が急減する多数の電離圏の穴が、日本上空で観測され、その構造が高度約2,000kmの宇宙空間まで伸びていることを確認。
- 電離圏の穴の形成に関わる電離圏高度の上昇が、気圧波の到来よりも約1~2時間前に開始していることを発見。
- 電波障害を起こす宇宙天気現象が、太陽フレアなどの太陽活動だけでなく、大規模噴火等の地表の現象にも起因することを明示する事例。
【概要】
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学宇宙地球環境研究所の新堀 淳樹 特任助教らの研究グループは、全球測位衛星システム(GNSS) 注2)、気象衛星ひまわり、ジオスペース注3)探査衛星「あらせ」、電離圏観測機器などのデータを解析し、南太平洋トンガ沖海底火山の大規模噴火に伴う同心円状の気圧波が引き起こした電離圏電子密度の不規則構造の観測に成功しました。
観測データにおいて、通常よりも1~2桁程度、電子密度が急減する多数の電離圏の穴が日本上空で観測され、探査衛星「あらせ」の観測によってこの電離圏の穴は、2,000kmの宇宙空間まで伸びていることが分かりました。また、電離圏の穴の形成は、電離圏の高度上昇が原因であったことと、その高度上昇は火山噴火による気圧波の到来よりも約1-2時間も前に起こっていたことが分かりました。本研究は、このような火山噴火に伴って発生した大気変動による電離圏の穴の生成機構を明らかにしました。また、電離圏の穴は電波障害の原因であり、宇宙天気の観点で予報が必要な項目です。電波障害を起こす宇宙天気現象は、太陽フレアなどの太陽活動に起因することが広く知られていますが、本研究結果は、宇宙天気現象が大規模噴火等の地表の現象にも起因することを明示する重要な事例です。
本研究成果は、2023年5月22日午後6時(日本時間)付ネイチャー?リサーチ社刊行の総合国際学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されます。
図1:トンガ火山噴火後に観測された気圧波と電離圏不規則構造。(a)世界時注8)2022年1月15日11:40における赤外輝度温度と5分間のTECの分散値の2次元マップ図。縦軸と横軸はそれぞれ、地理緯度と経度を表す。図中の横方向の赤線は磁気赤道注9)を表す。(b) 探査衛星「あらせ」観測による電子密度変化の時系列プロットと赤外輝度温度の緯度-時間プロット。図下の数字は、時間と探査衛星「あらせ」の位置を示す。(c) 5分間のTECの分散値の2次元マップ図上に探査衛星「あらせ」観測による電子密度変化を重ねた図。
【用語解説】
注1) 電離圏:
地球を取り巻く超高層大気中の分子や原子が、紫外線やエックス線などにより電離した、高度約60~1,000kmの領域。この領域は電波を吸収、屈折、反射する性質を持ち、これによって短波帯などの電波伝搬に影響を及ぼす。
注2) 全球測位衛星システム(GNSS):
アメリカのGPS、日本の準天頂衛星(QZSS)、ロシアのGLONASS、欧州連合のGalileo等の衛星から発せられる信号を用いた位置測定?航法?時刻配信を行う衛星測位システムの総称。その中で、よく認知されている全地球測位衛星システム(GPS)は、上空約2万kmを周回するGPS衛星(6軌道面に30個配置)、GPS衛星の追跡と管制を行う管制局、測位を行うための利用者の受信機で構成される。
注3) ジオスペース:
人類の活動域となりつつある、地球周辺の宇宙空間。
注8) 世界時:
グリニッジ子午線を基準とし、夜中の0時を1日の始めとする平均太陽時。いわゆるグリニッジ時間である。
注9) 磁気赤道:
地磁気(地球磁場)の伏角、すなわち磁針の方向と水平面の作る角がゼロである点を結んだ曲線。磁気赤道で地球一周をするが地理経度によって磁気赤道の緯度は異なる。
問い合わせ先
東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻
教授 土屋 史紀(つちや ふみのり)
電話:022-795-6738
E-mail:fuminori.tsuchiya.a8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学理学研究科地球物理学専攻
准教授 熊本 篤志(くまもと あつし)
TEL:022-795-6515
E-mail:kumamoto*stpp.gp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院理学研究科?理学部 広報?アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708 FAX:022-795-5831
E-mail:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)