2023年 | プレスリリース?研究成果
多細胞型分子ロボット製造のための新手法を開発 ― 新しいソフトロボット構築への展開で医療や産業への貢献に期待 ―
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科ロボティクス専攻
准教授 野村 慎一郎
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 人工的な多細胞体の自己組織化により全長数cmの分子ロボット(注1)を作るための新たな手法を開発しました。
- 直径200 ?m程度の液滴が自発的に隣接し、天然の多細胞組織に似た多区画構造を作り出す画期的な技術です。
- 磁性ナノ粒子を含有させることで、外部から直接制御が可能です。
- 人工的な分子デバイスや新しいソフトロボット(注2)構築への重要な技術です。
【概要】
生体内外で狙った働きをさせることにより病気の治療や診断に役立つ分子ロボットの研究が盛んに行われています。東北大学大学院工学研究科ロボティクス専攻のアーチャー?リチャード?ジェームズ特任研究員と野村慎一郎准教授らのグループは、人工的な多細胞体から分子ロボットを作るための新たな手法を開発しました。脂質をコーティングしたスポンジから直径200 ?mほどのミクロな液滴(注3)をしぼり出し、その液滴が水面で次々と集合?連結することで、全長3 cmほどの天然の多細胞組織の形状に似た多区画構造(注4)を作る画期的な手法です。この手法では、実際の生体組織のように異なる区画を隣接させることも可能です。また磁性ナノ粒子を含有させることで、構造体を外部から磁場により制御することもできます。この人工多細胞体の製造技術は、人工的にデザインした分子を使い、手に取ることのできるサイズの多細胞型ソフトロボットを構築する基礎となります。
本研究成果は、3月28日に表面科学分野の専門誌Langmuirに掲載されました。
実際に形成された多細胞体構造
【用語解説】
注1. 分子ロボット:
センサ(感覚装置)、プロセッサ(計算機)、アクチュエータ(駆動装置)などのロボットを構成するデバイスが分子レベルで設計されており、それらを一つに統合することで構成される分子のシステム。
注2. ソフトロボット:
柔らかい素材で作られたロボットで、自然界の生物に似た形態や動きを示し、人間や他の生物、環境への適応性の向上によって医療、災害救援、農業など幅広い分野で活躍が期待されている。
注3. 液滴:
水溶液表面に脂質や界面活性剤などの両親媒性分子が配列し、膜を形成することで、空気や油や有機溶媒などの疎水性の環境中で維持される、主に球状の構造。水滴と油滴では膜分子の配列が逆転する。
注4. 多区画(マルチコンパートメント)構造:
膜に包まれた微細な液滴(コンパートメント)が多数連結して区画化され、形成される巨視的な材料で、裸眼で見える大きさ(cmスケール)に生長する。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科ロボティクス専攻
准教授 野村 慎一郎
TEL: 022-795-6910
E-mail: SMNomura*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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