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ゴム伸縮時の弾性熱量効果を利用した冷却機構の高効率化に成功 フロンを代替する環境にやさしい空調の実現に期待

【本学研究者情報】

〇流体科学研究所 教授 小宮 敦樹
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 天然ゴムなどに代表される弾性体が持つ「弾性熱量効果*1」を利用した冷却機構の性能を定量的に評価しました。
  • ゴムの弾性熱量効果による冷却機構は、フロン*2を用いたこれまでの冷却機構が持つ成績係数に劣らない値を有していることを明らかにしました。
  • 提案した冷却機構は出力向上が期待でき、冷房?冷却機器としての社会実装が期待できます。

【概要】

地球環境を考えなければならない今日、フロン冷媒などに代表される地球温暖化係数の高い温室効果ガスや二酸化炭素を用いた冷却を代替する冷却機構の実現が強く望まれています。このような背景の中、磁性体や弾性体といったカロリック材料*3と呼ばれる物質に注目が集まっており、それらを利用した新たな冷却機構の開発が活発に行われています。

東北大学流体科学研究所のGiulia Lombardi研究員(日本学術振興会外国人特別研究員)、フランス国立応用科学院リヨン校(INSA Lyon)のGael Sebald教授、Jacques Jay教授、Laurent Lebrun教授、Gildas Coativy研究員および流体科学研究所の小宮敦樹教授らの研究グループは、天然ゴムなどの弾性体伸縮時の発熱?吸熱現象(弾性熱量効果)に着目し、この現象を用いて高温領域と低温領域を作り出すことにより、冷却機構の高効率化に成功しました。また、性能の向上についても検討を行い、弾性体の配置を最適化し、その熱量効果を有効に利用することで、成績係数(COP)*4 が6以上となることを明らかにしました。フロンを利用した冷却機構の代替としての新たな冷却機構の実現が期待されます。

本研究成果は、2023年1月6日に国際的な学術出版大手の応用熱工学専門誌「Applied Thermal Engineering」にオンライン掲載されました。

図1:弾性熱量効果によるゴムの冷却性能 
(A)流体を介して熱移動させた際の高温側と低温側の温度 (B)ゴム伸縮実験装置の写真 (C)伸縮開始後50秒後のゴム表面の温度分布 (D)伸縮開始後4000秒後のゴム表面の温度分布 (E)低温側に熱量を加えることで弾性熱量効果の性能を評価 (F)冷却性能,機械損失および成績係数と温度差の関係

【用語解説】

*1 弾性熱量効果
弾性体の形状が急激に変形する際に、変形前後のエントロヒ?ーの差に相当する発熱や吸熱か?起こる効果。

*2 フロン
フルオロカーボン(フッ素と炭素の化合物)の総称。エアコン、冷蔵?冷凍庫の冷媒や、建物の断熱材、スプレーの噴射剤などに活用されてきた。しかしオゾン層の破壊と地球温暖化など地球環境への影響が明らかになった。日本の法律では、オゾン層破壊に大きく影響するCFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)を「特定フロン」とし、破壊しないHFC(ハイドロフルオロカーボン)を「代替フロンとして、HFCなどへの転換を進めてきた。しかしHFCは二酸化炭素をはるかに上回る温室効果がある。地球温暖化の防止のためフロンの排出を抑制するとともに、ノンフロンや温室効果の低い物質にしていくことが重要となっている。

*3 カロリック材料
磁場や電場、圧力場や応力場といった周囲の場の環境が変わる際に、断熱条件下で大きな温度変化を生じる物質の総称。

*4 成績係数(COP)
エアコンやヒートポンプなどの効率を表す指標で、機器の消費電力に対する得られる熱量で定義される係数。

詳細(プレスリリース本文)※2023年1月24日に訂正版へ差し替えPDF

※以下のとおり訂正いたしました。
?6ページ目【掲載論文】DOI番号
修正前:10.1016/j.applthermaleng.2023.12001
修正後:10.1016/j.applthermaleng.2023.120016

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学流体科学研究所 
教授 小宮 敦樹(こみや あつき)
電話 022-217-5876
E-mail: komiya*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)


(報道に関すること)
東北大学流体科学研究所
広報戦略室
電話 022-217-5873
E-mail: ifs-koho*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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