2022年 | プレスリリース?研究成果
新型コロナウイルスの複製装置を特異的に検出する新しい抗体の開発に成功 新型コロナウイルス増殖機構の解析に期待
【本学研究者情報】
〇大学院医学系研究科分子薬理学分野 教授 加藤幸成
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)注1の複製装置であるRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)注2を特異的に検出する新しい抗体注3を開発した。
- これらの抗体は、2000年代初期に流行したSARSコロナウイルス(SARS-CoV)を認識せず、新型コロナウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼのみを認識する。
- これらの抗体を用いた新型コロナウイルスの増殖機構の解析が期待される。
【概要】
特定のウイルスのタンパク質を特異的に認識する抗体は、ウイルス増殖のメカニズムの解明やウイルス感染症治療法の開発のために重要です。国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野の増富健吉分野長、町谷充洋研究員、東北大学大学院医学系研究科 分子薬理学分野の加藤幸成教授、同?抗体創薬共同研究講座の金子美華准教授、国立感染症研究所 治療薬?ワクチン開発研究センター 渡士幸一治療薬開発総括研究官らの共同研究グループは、新型コロナウイルスのウイルスゲノム複製やウイルス遺伝子発現に関わるRNA依存性RNAポリメラーゼを特異的に検出するモノクローナル抗体(RdMab-2, -13, -20)を新たに開発しました。これらの抗体は2000年代初期に流行したSARSコロナウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを認識せず、新型コロナウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを特異的に認識します。新型コロナウイルスなどのコロナウイルス感染細胞における、RNA依存性RNAポリメラーゼによるウイルスRNAの転写機構については未解明な部分が多いため、今後、これらの抗体を用いることで詳細な解析が期待できます。また、新型コロナウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重要な治療標的なので、治療薬開発への応用も期待できます。
本研究成果は、2022年12月10日に英国科学誌『Virology Journal』にオンライン掲載されました。
【用語解説】
注1 新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronaviruse-2, SARS-CoV-2): 新型コロナウイルス感染症 (coronavirus disease 19, COVID-19) の原因となるコロナウイルス。2019年に初めて発生が確認された感染症で世界的流行(パンデミック)を引き起こしている。
注2 RNA依存性RNAポリメラーゼ (RNA-dependent RNA polymerase, RdRP) :RNAを鋳型にRNAを複製する酵素であり、RNAウイルスのゲノム複製や遺伝子発現において必須のタンパク質である。
注3 抗体:特定のタンパク質(抗原)と特異的に結合し、抗原抗体反応を起こすタンパク質。抗原の異なる部位を認識する複数種類の抗体からなるものをポリクローナル抗体と呼び、抗原の1ヶ所のみを認識する一種類のものをモノクローナル抗体と呼ぶ。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科分子薬理学分野
教授 加藤 幸成 (かとう ゆきなり)
電話番号: 022-717-8207
Eメール: yukinari.kato.e6*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
電話番号: 022-717-7891
FAX番号: 022-717-8187
Eメール: pr-office*med.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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