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未知の化合物の探索と活用 ~システム生物学のミッシングリンク、「メタボロームデータ」の整備~

【本学研究者情報】

〇東北メディカル?メガバンク機構生命情報システム科学分野 講師 青木裕一
東北メディカル?メガバンク機構ウェブサイト

【概要】

情報?システム研究機構 国立遺伝学研究所、かずさDNA研究所、東北大学東北メディカル?メガバンク機構、株式会社さくら科学、京都大学の共同研究チームは、特定の生物に存在する未知の化合物を探索できるデータベースを開発し、公開しました。

研究チームは、生物をはじめとする試料中の化合物成分を網羅的に検出する「メタボローム解析(1)」の技術を用いて、動植物?微生物?食品?環境サンプル?工業製品など、合計1000種類を超える様々な試料を分析し、本データベースを構築しました。このデータベースにより、試料から検出された既知?未知化合物成分を任意の試料間で比較することが可能になったのです(万物メタボロームレポジトリ 等)。

論文では、本データベースを用いて化合物とゲノム情報を統合解析することで、特定の植物種に特異的な代謝経路上の化合物とその代謝に関与する遺伝子候補を選抜した活用例などを報告しています。

本データベースによって、生理活性などに基づいた精製?構造決定という、個別成分の「ボトムアップ型」の従来の研究アプローチに加え、バイオインフォマティクス(2)を用いて化合物世界の全体像から未知の化合物 を選びだす「トップダウン型」の研究アプローチが可能となりました。

今後、未知の有用化合物やマーカー化合物の発見など、研究分野を超えた本データベースの活用が期待されます。

本研究成果は「Nucleic Acids 虎扑电竞 (Database Issue)」に2022年11月24日(日本時間)に掲載されました。

図1:データベースのトップ画面を示したもの

【用語解説】

(1)メタボローム解析
生物の代謝により生産される代謝化合物(メタボライト)の全体像(メタボローム)をとらえようとする技術。主な装置として、個々の化合物を性質の違いによって分離する装置と、化学成分の質量を高感度?高速に測定できる質量分析装置の組み合わせがよく用いられる。分離装置、質量分析装置とも、様々な種類があり、また分析条件を変えることで、特定の化合物群をよりよく検出するよう最適化が可能である。一方で、化合物の性質は多様なため、一つの装置?条件ですべての化合物を検出することはできない。このため、メタボローム解析の手法は、数百程度の化合物群に対象を限定してしまう「ターゲット解析」と、未知成分まで含めて対象を限定しない「ノンターゲット解析」に大別される。どちらの手法も、生物に限らず、食品や環境試料など、幅広く活用されている。

(2)バイオインフォマティクス
生物の遺伝子配列データや系統分類情報など、生物に関する様々な情報を、主にコンピューターを用いて処理し解析することで、生命現象を解き明かすことを目的とした学問分野。生物情報をバイオインフォマティクス で扱うためには、生物に関する情報がコンピューターで扱いやすく整備されていることが重要である。メタボロームのデータはこの点が、他の網羅的データ(ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームなど)と比較して立ち遅れていた。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学東北メディカル?メガバンク機構広報戦略室
担当:長神 風二(ながみ ふうじ)
電話番号:022-717-7908
ファクス:022-717-7923
Eメール:pr*megabank.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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