2022年 | プレスリリース?研究成果
パンデミックで人の流れはどう変わったか? 人流ビックデータが描くニューノーマルへの軌跡
【本学研究者情報】
〇情報科学研究科 人間社会情報科学専攻 都市社会経済システム分析分野
博士後期課程学生 坪井和史
准教授 伊藤亮
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 本研究は、新型コロナ感染症の第1波から第3波において、感染リスクがもたらす外出行動の変化を分析しました。
- 人々は感染リスクが高い混雑した目的地への移動を自粛しています。
- 緊急事態宣言は、感染リスクの高い移動に対してより大きな抑制効果を示しました。
- 第1波から第3波にかけて人流の減少が弱くなっています。これは、未知の感染症に対して人々が順応し、ニューノーマル(新しい生活様式)に至る過程を示していると考えられます。
- 緊急事態宣言のリスク喚起効果は、経済活動と感染抑制を両立する制度設計を考える上で、重要なエビデンスになると考えられます。
【概要】
2019年暮れに始まった新型コロナウイルス感染症(COVID?19)によるパンデミック(世界的大流行)は現在もまだ収束していません。当初多くの国が感染の拡大を抑制するために強制力を持つロックダウン*1の実施に踏み切ったなか、日本政府は強制力のない緊急事態宣言*2を発令し、その効果はあったとみられています。世界がコロナウィルスとの共存に向けて舵を切りつつある現在、感染拡大の抑制と経済活動の維持のバランスは重要な政策課題となっており、人々の自発的な行動抑制を促す日本の感染対策に注目が集まっています。
東北大学 大学院情報科学研究科の博士課程2年生 坪井和史、藤原直哉 准教授、伊藤亮 准教授のグループは、2020年1月から2021年3月の1年3ヶ月に及ぶ人流ビックデータを用いて、新型コロナウイルスの感染者数や緊急事態宣言が、4都県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)における人々の外出自粛に与える影響を分析しました。
得られた結果は、以下の3つです。(1) コロナ禍において人々は感染リスクが高い目的地への外出を自粛している。(2) 緊急事態宣言は、感染リスクを喚起することで自粛を促す効果があった[図1]。(3) 長引くコロナとの生活に慣れてくると、人流がコロナ以前の水準に近づいていく。
本成果は2022年10月28日にPublic Library of Science (PLOS)社の科学雑誌「PLOS ONE」のオンライン版で公開されました。
図1 緊急事態宣言下での人々の自粛:(a)人口密度の高い(1セル:500m×500mあたり約4000人以上)所でコロナ以前と比べて人流が減少しています。(b) そのようなセルは黒点で示され、東京、大阪、名古屋など大都市に多く見られます。(c) 黒点は4都県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)で特に集中しています。
【用語解説】
*1 ロックダウン
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、外出や行動を制限する措置。中国やインド、マレーシアなど各国政府が2020年以降、人々の移動を制限するために相次いで採用した。国ごとに体系はことなっており、違反者に罰則を科すなど、私権を制限する場合もある。日本は外出自粛を要請するにとどまり、罰則を設けていない。
*2 緊急事態宣言
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき、首相が出せる宣言。専門家の意見を基に、(1)国民の生命や健康に著しく重大な被害を与える恐れ(2)全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れ――の2要件を満たすかを判断する。
問い合わせ先
■ 研究に関すること
東北大学大学院情報科学研究科 准教授 伊藤亮
TEL: 022-795-4420
E-mail: itoh*se.is.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院情報科学研究科 博士課程2年 坪井和史
TEL: 022-795-4503
E-mail: tsuboi*se.is.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院情報科学研究科 准教授 藤原直哉
TEL: 022-795-4346 FAX: 022-795-5815
E-mail: fujiwara*se.is.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
■ 報道に関すること
東北大学大学院情報科学研究科 広報室
担当 佐藤
TEL: 022-795-4529 FAX: 022-795-5815
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(*を@に置き換えてください)
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