2022年 | プレスリリース?研究成果
中性子星の合体で合成されたレアアースを初めて特定
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科 天文学専攻
大学院生 土本菜々恵(どもとななえ)
准教授 田中雅臣(たなかまさおみ)
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 宇宙における金やプラチナ、レアアース(希土類元素)(注1)の起源は解明されていない。
- 中性子星(注2)の合体現象で重元素が作られることが分かっていたが、作られた元素の種類や量は明らかになっていなかった。
- 中性子星合体からのシグナルを解読することで、合成されたレアアースを初めて特定した。
- 宇宙における重元素の起源の解明につながる研究成果。
【概要】
宇宙における金やプラチナ、レアアースなどの起源は天文学?宇宙物理学の長年の未解決問題です。起源天体としては中性子星の合体現象が有力視されていましたが、そのような現象で実際にどのような元素が合成されたかは明らかになっていませんでした。
東北大学大学院理学研究科の土本菜々恵 大学院生 (日本学術振興会特別研究員)らの研究グループは、中性子星合体からの光のスペクトル(注3)を解読するため、全ての重元素の性質を網羅的に調べ、国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイⅡ(注4)」を用いて詳細な数値シミュレーションを行った結果、ランタンとセリウムという一部のレアアースが、中性子星の合体で実際に観測された赤外線スペクトルの特徴を説明できることを明らかにしました。これは個々のレアアースが中性子星の合体で作られた初めての直接的な証拠であり、宇宙における元素の起源の理解を大きく進めるものです。
本研究成果は、2022年10月26日に「The Astrophysical Journal」電子版に掲載されました。
図1:中性子星合体と「キロノバ」の想像図。??Tohoku University
【用語解説】
(注1) レアアース
ランタノイド元素 (原子番号57?71番) とスカンジウム (原子番号21番)、イットリウム (原子番号39番) の17元素の総称。希土類元素とも言う。工業的に重要で、例えばランタンやセリウムは光学レンズ、ガラス研磨剤、蛍光体などに用いられている。
(注2) 中性子星
質量の大きい恒星が進化した後に残る天体の一種。半径10 km程度の大きさに地球の約50万倍の質量が詰まっており、非常に密度が高い。
(注3) スペクトル
光の波長ごとの強度分布。元素が特定の波長の光を吸収すると、その波長での光の強度が弱まり、吸収線として観測される。
(注4) アテルイⅡ
国立天文台が運用する、シミュレーション天文学専用のスーパーコンピュータ。岩手県奥州市の国立天文台水沢キャンパスに設置され、2018年6月より稼働を続ける。理論演算性能3.087ペタフロップス(1秒間に約3000兆回の計算を行う能力)は、天文学専用としては世界最速をほこる。今回の研究では、アテルイⅡの約400コアを用いて、「キロノバ」のスペクトルの細かい特徴を高速にシミュレーションした。
問い合わせ先
<研究に関すること>
東北大学大学院理学研究科天文学専攻
大学院生 土本 菜々恵(どもと ななえ)
電話:022-795-6521
E-mail:n.domoto*astr.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院理学研究科天文学専攻
准教授 田中 雅臣(たなか まさおみ)
電話:022-795-6500
E-mail:masaomi.tanaka*astr.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
<報道に関すること>
東北大学大学院理学研究科広報?アウトリーチ支援室
電話:022-795-6708
E-mail:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)