2022年 | プレスリリース?研究成果
神経に柔らかく巻付くオール有機物のゲル電極 ~迷走神経刺激に有用な MRI 対応の電極が実現~
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科 ファインメカニクス専攻
教授 西澤松彦
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- ハイドロゲルを基材とする巻付く電極(カフ型電極)を開発
- 生体に安全な柔軟性を有し、オール有機物なのでMRIなどの画像診断を邪魔しない
- 神経線維に柔らかく巻付いて安全に密着固定を維持
- てんかん発作やうつ病の治療に有効な「迷走神経刺激」への有用性を動物実験で検証
【概要】
体内に埋め込んだ電極による迷走神経(注1)への刺激が、てんかん発作やうつ症状の緩和、心不全の治療などに有効だと分かり注目されています。しかし既存の刺激電極は白金などの金属がシリコーンゴム基材に組み込まれてあり、デリケートな神経束への安全な密着維持が困難でした。
この問題を解決するため、東北大学大学院工学研究科および高等研究機構新領域創成部の西澤松彦教授と大学院医学系研究科神経外科学分野の共同グループは、大学病院臨床研究推進センター(CRIETO)と協力して、水分を含む高分子のハイドロゲルを基材とするオール有機物の神経刺激電極を開発しました。研究グループは、「自然に巻付く性質」を付与したハイドロゲル基材と、独自開発したゲルの変形を邪魔しない伸縮性の導電性ポリウレタンの一体化に成功し、神経束などに柔らかく巻付いて安全?安定な刺激を可能とするカフ型のハイドロゲル電極が実現しました。金属を使わず有機物のみで構成された神経刺激電極です。東北大学大学院医学系研究科 神経外科学分野の大沢伸一郎医師が実施したブタによる動物実験で、迷走神経に対する密着固定の維持と刺激有効性を検証しました。他の末梢神経(感覚神経、運動神経)や「動く」筋組織への刺激など、電気刺激療法全般への適用が可能であり、 非磁性のため磁気共鳴画像装置(MRI)にも対応できることから、治療効果の向上と適用範囲の拡大が期待されます。
本成果は、2022年10月5日に医用材料に関する専門誌Advanced Healthcare Materialsにオンライン公開されました。
柔らかく巻付くハイドロゲル製のカフ型電極
【用語解説】
(注 1)迷走神経
延髄から出ている末梢神経で、主に副交感神経線維であり、多くの内臓臓器に分布して感覚、運動、分泌などの自律神経活動を制御している。
頸部迷走神経への刺激(VNS)は、日本においてはてんかんの治療に薬事認可され、アメリカでは難治性うつ病にもFDAに認可されている。
問い合わせ先
< 研究に関すること >
東北大学 大学院工学研究科 ファインメカニクス専攻 助教 照月大悟
TEL:022-795-3586 E-mail: daigo.terutsuki.a7*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院医学系研究科神経外科学分野 助教 大沢伸一郎
TEL:022-717-7230 E-mail: osawa*nsg.med.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
< 報道に関すること >
東北大学工学研究科?工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898 E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています