2022年 | プレスリリース?研究成果
RNAの材料分子が非生物反応で選択的に生成 -ホウ酸が化学進化を促進か?-
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科 地学専攻
大学院生 平川祐太(ひらかわゆうた)
准教授 古川善博(ふるかわよしひろ)
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- RNAの材料となるリボース5'-リン酸(注1)が、ホウ酸の働きによって、リボース(注2)とリン酸から非生物反応(注3)で選択的に生成することを初めて明らかにしました。
- リボースの異性体に比べてリボースのリン酸化が優先的に起こることが明らかになり、ホウ酸(注4)が豊富な環境ではRNAの材料として、リボースが選択され得ることが明らかになりました。
- 生命誕生前のヌクレオチド(注5)生成が、これまでの研究とは異なり、現在の生体反応と似た経路で行われていた可能性を示しています。
【概要】
最初期の生命では、RNA(図1)が生命の根幹をなす働きをしていたとするRNAワールド仮説が支持を得ています。しかし、生命のいなかった太古の地球でRNAがどのように組みたったのかは大きな謎となっています。
東北大学大学院理学研究科の博士課程学生?平川祐太、古川善博准教授、掛川武教授の研究グループは、ホウ酸の存在によってリボースとリン酸の結合が5'-水酸基に選択的に起こり、ヌクレオチドの材料であるリボース5'-リン酸が選択的に生成することを明らかにしました。また、ホウ酸が存在する場合にはリボースの異性体である複数の糖の中で、リボースのリン酸化が最も卓越することを明らかにしました。
この結果は、RNAの材料であるヌクレオチドの生成が、これまでの研究とは異なり、現在の生体反応と似た経路で起こっていたことを示すと共に、生命誕生前の地球でRNAの材料としてリボースが選択され得る環境を示唆するものとなります。本研究成果は、2022年7月19日発行の総合学術誌『Scientific Reports』で公開されました。
図1: RNAのモデル図
【用語解説】
(注1) リボース5'-リン酸
リボースの5位にリン酸が結合した分子.RNAにもこの位置にリン酸が結合している。
(注2) リボース
糖の一種でRNAに含まれる唯一の糖だが、安定性が低く、なぜRNAに使われているのかが謎となっている。
(注3) 非生物反応
生物や生体触媒である酵素などが関与しない反応。生命誕生前の地球では、非生物反応のみが起こっていた。
(注4) ホウ酸
ホウ素の酸化物で温泉水などに多く含まれる.リボースと複合体を形成しやすく、リボースの安定性を上昇させる効果が知られている.身近な例ではガラスの材料などに使われている。
(注5) ヌクレオチド(リボヌクレオチド)
リン酸とリボースと核酸塩基が結合した分子で、RNAはリボヌクレオチドが連なった高分子。
問い合わせ先
<研究に関すること>
東北大学大学院理学研究科地学専攻
大学院生 平川 祐太(ひらかわ ゆうた)
准教授 古川 善博(ふるかわ よしひろ)
電話:022-795-3453
E-mail:
yuta.hirakawa.s2*dc.tohoku.ac.jp
furukawa*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
<報道に関すること>
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
電話:022-795-6708
E-mail:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)