2022年 | プレスリリース?研究成果
免疫を抑制する新しい好酸球を発見 食物アレルギー治療法開発へ期待
【本学研究者情報】
〇大学院医学系研究科感染制御インテリジェンスネットワーク寄附講座 講師 笠松純
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 小腸にはたくさんの好酸球注1が存在することが報告されていたが、その役割はこれまで不明だった。
- 今回発見した好酸球には、免疫系を抑制する役割があり、その分化には芳香族炭化水素受容体注2が必要であることが分かった。
- マウスに芳香族炭化水素受容体を活性化する物質を食べさせると、免疫抑制型好酸球が増殖した。
- 本研究は、食物アレルギーの新しい治療法開発につながる可能性がある。
【概要】
好酸球は寄生虫感染やアレルギー反応で重要な役割を担う免疫細胞です。小腸には多くの好酸球が存在していますが、その役割はよく知られていませんでした。東北大学大学院医学系研究科感染制御インテリジェンスネットワーク寄附講座の笠松純講師らは、ワシントン大学セントルイス医学部および信州大学医学部と共同で、マウスの小腸には特殊な好酸球がいることを発見しました。この好酸球の役割を調べたところ、寄生虫に対する免疫応答を抑制していることが分かりました。また、この免疫抑制型好酸球の分化には芳香族炭化水素受容体経路が必須であり、加齢とともに好酸球が増加すること、芳香族炭化水素受容体を活性化する物質を食べさせると、この免疫抑制型好酸球が増加することも分かりました。食物アレルギーの新しい治療法開発につながる可能性があります。
本研究は2022年6月2日に米国科学アカデミー紀要Proceedings of the National Academy of Sciencesに掲載されました。
【用語解説】
注1. 好酸球:炎症を促進する物質を含む顆粒を細胞質にもつ白血球。寄生虫感染免疫やアレルギー反応で重要な役割をもつ。最近の研究から、脂肪組織や腸管など様々な組織に存在していることが分かってきた。IL-5と呼ばれるタンパク質が好酸球の分化に必要であり、IL-5やその受容体に結合する好酸球除去抗体は気管支喘息の治療に用いられる。
注2. 芳香族炭化水素受容体:活性化すると細胞核の中へ移行し、様々な遺伝子発現を誘導する転写調節因子。芳香族炭化水素受容体リガンドは発がん物質であるダイオキシンや、細菌の代謝産物、緑黄色野菜の含有物など様々なものが報告されている。これまでの研究から、芳香族炭化水素受容体は腸管リンパ球などの免疫細胞の分化に重要な役割を担うことが知られている。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
感染制御インテリジェンスネットワーク寄附講座
講師 笠松 純 (かさまつ じゅん)
TEL:022-717-8681
Eメール:kasamatsu*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
TEL:022-717-7891
FAX:022-717-8931
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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