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世界最大規模の自然毒食中毒の毒成分の 右半分構造の化学合成に初めて成功 カリブ海型シガテラ中毒の撲滅を目指して

【本学研究者情報】

〇生命科学研究科 教授 佐々木誠
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • カリブ海や北東大西洋で起こるシガテラ中毒の主要原因毒であるカリブ海型シガトキシン(C-CTX)は、これまで知られる類縁体のなかで最大の分子量と複雑な構造を有する巨大ポリ環状エーテル天然物である。
  • C-CTX類は自然界から純粋な試料の収集が困難な微量成分であるため、信頼性の高い検出法の開発を含めて、C-CTXに関する研究は立ち遅れていた。
  • 今回、C-CTXの分子右半分の構造の化学合成に初めて成功した。
  • シガテラ中毒予防のための微量検出法開発に必要な抗体作製を可能にし、さらに標準試料の提供のための全合成への道を拓く重要な成果である。

【概要】

熱帯?亜熱帯海域の魚類の摂取によって発生するシガテラ中毒は、世界最大規模の急性自然毒食中毒であり、中毒患者の発生数は年間2?6万人にも達しています。その原因となる毒は、渦鞭毛藻が産生するシガトキシン(CTX)類注1で、食物連鎖を通じて魚類に蓄積される複雑な巨大ポリ環状エーテル天然物注2です。CTX類としては基本骨格の異なる太平洋型、インド洋型、カリブ海型がある中で、近年、カリブ海型シガトキシン(C-CTX)による中毒発生が温帯域に拡大?多発する傾向にあり、その予防対策が世界的に急務の課題です。しかし自然界からはごく微量しか入手できないため、C-CTXに関する研究は大変遅れています。また、構造が巨大で複雑なため、他の天然物と比べて化学合成が困難です。今回、東北大学大学院生命科学研究科の佐々木誠教授のグループは、C-CTXの分子右半分の構造の化学合成に初めて成功しました。本研究は、シガテラ中毒予防のための微量検出法開発に必要な抗体作製を可能にするだけでなく、標準試料の提供のための全合成注3への道を拓く重要な成果です。本研究成果は、4月1日付の日本化学会誌Bulletin of the Chemical Society of Japan(オンライン版)に掲載されました。</p

図1 代表的な巨大ポリ環状エーテル天然物(太平洋型シガトキシン CTX1B とマイトトキシン)の化学構造

【用語解説】

(注1)シガトキシン類: シガテラ食中毒の主要原因毒であり、単細胞藻類の一種である渦鞭毛藻が生産し、食物連鎖を介して多様な魚類に蓄積される。電位依存性ナトリウムイオンチャネルに結合し、これを活性化することにより、強力な神経毒性を発現する。

(注2)ポリ環状エーテル天然物: 多数のエーテル環が梯子状に連なった特異な構造を有する海洋天然物である。その多くが巨大な化学構造と強力な生物活性を有している。

(注3)全合成: 天然物を適切にデザインした合成経路を経て人工化学合成すること。多段階の精密有機合成反応を駆使して達成される。

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 佐々木 誠 (ささき まこと)
電話番号: 022-217-6212
Eメール: masasaki*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)





(*を@に置き換えてください)

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