2022年 | プレスリリース?研究成果
大規模な組合せ最適化問題を解く確率的計算技術を開発 ?解収束時間を3桁以上低減し実時間で社会還元できる道を拓く?
【本学研究者情報】
〇電気通信研究所 准教授 鬼沢直哉
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 大規模な組合せ最適化問題注1)を高速に解く確率的計算注2)技術を開発
- 量子アニーリング注3)マシンと比較して、約16倍の大規模な組合せ最適化問題を解くことができる技術を、一般的なパソコン(古典コンピュータ)上で実証
- 従来手法と比較して約1,000倍の高速化が可能となり、複雑な社会問題を効率的に処理できる新たな手法として期待
【概要】
組合せ最適化問題は、膨大なデータの組合せから最適解を求める問題として知られています。組合せ最適化問題を高速に処理可能な技術として注目されているのがD-Waveなどの量子アニーリングマシンですが、いくつもの難点があり、大規模な組合せ最適化問題を解くことは困難です。東北大学電気通信研究所の鬼沢直哉准教授、羽生貴弘教授、カナダ?マギル大学のWarren J. Gross教授らの共同研究チームは、確率的演算に基づく新たなシミュレーテッドアニーリング注4)技術を開発し、量子アニーリングで知られるD-Wave Systems社のマシンと比較して、約16倍の大規模な組合せ最適化問題を解くことに成功しました。
今回開発した確率的計算技術は、一般的なパソコン(古典コンピュータ)で利用可能なアルゴリズムでありながら最適解への収束率を飛躍的に高めることに成功し、極低温動作を必須とする量子アニーリングマシンを実用性で大幅に上回る性能を実証しました。また、決定論的計算注2)に基づく従来手法と比較して、約1,000倍高速に組合せ最適化問題を解くことにも成功しました。多くの点で既存のアニーリング技術を大幅に超える性能を示しており、今後の情報処理技術に新たな展開をもたらし得るものと期待されます。
本研究成果は2022年3月30日付で米国の科学誌「IEEE Transactions on Neural Networks and Learning Systems」でオンライン公開されました。
図1 (a)エネルギー関数で表現された組合せ最適化問題のイメージ図。0か1の状態を持つノードの組合せによりエネルギーを表現し、最小エネルギーに到達すると最適解が得られる。 (b)今回開発した確率的計算技術に基づくノードの状態の統計的近似手法のブロック図。
【用語解説】
注1) 組合せ最適化問題
ある課題に対して膨大なデータの組合せから最適解を求める問題。具体的な応用はITインフラ整備?施設配置問題?ポートフォリオ最適化など。
注2)決定論的計算と確率的計算
現在のコンピュータは、入力情報から出力情報が一意に決まる決定論的計算に基づく。一方で、確率的計算では出力を一意に決定せず、主に統計的な手法に基づく出力を決定する計算技術。
注3)量子アニーリング
組合せ最適化問題を解くことができる量子コンピューティング技術の一つ。D-Wave Systems社の量子アニーリングマシンは、極低温で動作する超伝導素子により構成。
注4)シミュレーテッドアニーリング
一般的なパソコン(古典コンピュータ)で動作可能で、組合せ最適化問題を解くことができる計算技術の一つ。
問い合わせ先
<研究に関すること>
東北大学電気通信研究所 准教授
担当 鬼沢 直哉
電話 022-217-5508
E-mail naoya.onizawa.a7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
<報道に関すること>
東北大学電気通信研究所 総務係
電話 022-217-5420
E-mail riec-somu*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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