2022年 | プレスリリース?研究成果
ひとふりで立体像を獲得するレーザー顕微鏡法を開発~「光の針」を使って3 次元情報を一挙に可視化~
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 准教授 小澤祐市
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 観察対象の3次元的な微細構造や動きを実時間かつ動画的に記録できる新たなレーザー走査型蛍光顕微鏡法※1を開発
- 「試料を照らす光」と「検出される光」の伝搬特性を操作する方法を提案
- 極めて迅速な3次元観察?計測技術として生命?医療分野や材料科学、製造現場などでの応用展開に期待
【概要】
レーザー走査型蛍光顕微鏡法は、生体の細胞や組織などを生きたまま3次元的に観察できることから生命科学研究や医療診断では必須の観察ツールです。しかし、3次元像を得るには試料位置を変えながらレーザー走査を何度も繰り返す必要があるため、リアルタイム性に欠けるうえに、試料の損傷や光退色※2といった多くの課題がありました。東北大学 多元物質科学研究所の小澤祐市准教授らと大阪大学 産業科学研究所の中村友哉准教授の研究グループは、細長い「針」状の分布を持つレーザー光を1回2次元走査するだけで、試料の3次元情報を一挙に取得する新たなレーザー顕微鏡を開発しました。
今回開発したイメージング法では、針状の光で試料を照明することに加えて、試料から発する光に対して独自の波面制御※3を施すことで、観察対象の複数の深さ位置の情報を同時に検出する新しい原理を提案しました。構築したシステムにより、従来のレーザー顕微鏡では困難であったリアルタイムかつビデオレートでの高速な3次元可視化性能を実証しました。本技術は、生命?医療分野に加えて材料科学や製造現場などへの応用展開も見込まれ、多くの学術?産業分野で必要となる光イメージング技術の大幅な性能向上が期待されます。
なお、本成果は、米国時間の2月24日(木)付で、光科学に関する国際的な学会であるOptica(旧?米国光学会、OSA)が発行するオープンアクセス電子ジャーナル誌の「Biomedical Optics Express」誌に掲載されました。
図1. 光の「針」と独自の波面制御の原理に基づく高速な3次元イメージング法
(a) 開発した方法、(b) 従来のレーザー顕微鏡法による3次元画像構築
【用語解説】
※1. レーザー走査型蛍光顕微鏡法
蛍光試料面上でレーザー光の集光スポットを2次元的に走査し、各点からの蛍光強度を検出器によって取得することで画像を構築する顕微鏡法。
※2. 光退色
長時間の光照射あるいは強い光の照射によって蛍光強度が低下する現象。蛍光物質の構造的な変化に伴って不可逆的な光退色が起こると観察ができなくなる。
※3. 波面制御技術
光の波としての性質の一つである位相の空間的な分布を、液晶素子を使った空間光変調器などの装置によって人為的に操作する技術。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
准教授 小澤 祐市(こざわ ゆういち)
電話: 022-217-5146
E-mail: y.kozawa*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
電話: 022-217-5198
E-mail: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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