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二次元ディラック電子の量子異常を実証-トポロジカル絶縁体表面での半整数量子ホール効果を観測-

【本学研究者情報】

〇金属材料研究所 教授 塚﨑 敦
研究室ウェブサイト

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター強相関量子伝導研究チームの茂木将孝客員研究員(東京大学大学院工学系研究科博士課程(研究当時))、十倉好紀チームリーダー(東京大学卓越教授/東京大学国際高等研究所東京カレッジ)、川村稔専任研究員、強相関界面研究グループの川﨑雅司グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)、強相関理論研究グループの永長直人グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)、東京大学大学院工学系研究科の髙橋陽太郎准教授(理研創発物性科学研究センター統合物性科学研究プログラム創発分光学研究ユニット ユニットリーダー)、岡村嘉大助教、森本高裕准教授、東北大学金属材料研究所の塚﨑敦教授らの共同研究グループは、トポロジカル絶縁体[1]と磁性トポロジカル絶縁体[2]の積層薄膜において、半整数(1/2)に量子化されたホール伝導度[3]を観測しました。

本研究成果は、トポロジカル絶縁体表面に存在する単一の二次元ディラック電子[4]に関する量子異常[5]を反映したもので、今後、単一ディラック電子を利用したさらなる基礎物理研究の展開が期待できます。

今回、共同研究グループは、独自に開発したトポロジカル絶縁体「(Bi1-xSbx)2Te3(Bi:ビスマス、Sb:アンチモン、Te:テルル)」と磁性トポロジカル絶縁体「Cr0.24(Bi0.27Sb0.73)1.76Te3(Cr:クロム)」の積層薄膜に対して、テラヘルツ帯[6]の透過光の偏光[7]を測定し、半整数に量子化された磁気光学効果[7]を観測しました。また、電気伝導測定によっても半整数量子化ホール伝導度を観測し、二つの独立した測定手法でこの現象を確かめました。

本研究は、科学雑誌『Nature Physics』オンライン版(1月27日付:日本時間1月28日)に掲載されました。

積層構造(左)と磁性トポロジカル絶縁体表面に生じるパリティ異常

【用語解説】

[1] トポロジカル絶縁体
物質中の電子状態の幾何学的性質(トポロジー)を反映して、中身は電気を通さない絶縁体であるが、表面では電気を通す金属となる特殊な物質。

[2] 磁性トポロジカル絶縁体
トポロジカル絶縁体に磁性元素を添加することで、磁石の性質を持たせたもの。

[3] ホール伝導度、量子ホール効果、量子異常ホール効果
磁場中を電子などの荷電粒子が動くと、ローレンツ力によって荷電粒子の動きが曲げられる。その結果、物質内では、電流を流したとき電子の動きが曲げられることで、電流の垂直方向に電圧が生じる。この現象を「ホール効果」、測定される電圧を電流で割った値を「ホール抵抗」と呼ぶ。一方、電圧を加えたときの垂直方向への電流の流れやすさのことを「ホール伝導度」と呼ぶ。磁石の中では、磁場がゼロであっても磁化によってホール抵抗が生じ、これを「異常ホール効果」と呼ぶ。二次元の物質では、ホール効果や異常ホール効果の結果として、ホール抵抗がプランク定数hと電気素量eで表されるh/e2(約25.8kΩ)の値に量子化することがあり、それぞれ「量子ホール効果」「量子異常ホール効果」と呼ぶ。

[4] ディラック電子、相対論的粒子
速度が光速に近い粒子について、特殊相対性理論を適用した量子力学を相対論的量子力学と呼び、そこでの粒子を相対論的粒子と呼ぶ。特に、電子などスピンを持つ粒子はディラック粒子(ディラック電子)と呼ばれる。

[5] 量子異常、パリティ異常
古典論で保存されると予想される対称性が量子理論では保存されないことがあり、それを「量子異常(アノマリー)」と呼ぶ。物性物理学では近年、三次元のワイル粒子(質量のないディラック電子)でカイラル対称性が保存されないカイラル異常や、二次元のディラック電子でパリティ(空間反転)対称性が保存されない「パリティ異常」が、それぞれワイル半金属や二次元ディラック電子系と結び付けられ、精力的に研究されている。

[6] テラヘルツ帯
周波数が1012Hz(1兆ヘルツ)付近にある電磁波。電波と光の間の周波数で、両方の特性を持っている。私たちが目で感じられる可視光と比べて、エネルギーは1/500程度。

[7] 偏光、磁気光学効果、ファラデー回転角
一般に、磁石の性質を持つ物質(磁性体)に光を当てると、透過した光および反射した光の「偏光(振動電場の方向)」が回転する。前者をファラデー効果、その回転角を「ファラデー回転角」と呼ぶ。後者をカー効果、その回転角をカー回転角と呼ぶ。両者の効果を合わせて、「磁気光学効果」という。

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学金属材料研究所 教授 塚﨑 敦
TEL:022-215-2085
E-mail:tsukazaki*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材?報道に関すること)
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
TEL:022-215-2144 FAX:022-215-2482
E-mail:press.imr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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