2022年 | プレスリリース?研究成果
火山活動による地球寒冷化が恐竜の繁栄を導いた? 三畳紀末の大量絶滅の実態を解明
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科地学専攻 名誉教授 海保邦夫
研究者紹介
【発表のポイント】
- 大規模火山活動による堆積岩の加熱温度の変化が気候変動に影響したことを明らかにした。
- 低温加熱による多量の二酸化硫黄ガス放出が、成層圏の硫酸エアロゾルを増加させ、太陽光を反射して、寒冷化を引き起こした。
- 寒冷化が三畳紀に繁栄したワニの先祖を絶滅させ、ジュラ紀以降の恐竜の大繁栄の引き金となった。
【概要】
5大大量絶滅の4回目にあたる約2億年前の三畳紀末の大量絶滅を境に、それまで繁栄していたワニの先祖の大型爬虫類が絶滅し、恐竜の多様化が始まりました(図1)。それまで小さく地味だった三畳紀の恐竜は三畳紀末の大量絶滅以後に急速に大型化して、ジュラ紀以降の繁栄につながりました。
この大量絶滅の原因は、超大陸パンゲアの分裂を引き起こした大規模火山活動であると考えられていました。しかし、火山活動がどのように環境変動を引き起こしたかは不明でした。
東北大学大学院理学研究科地学専攻の海保邦夫教授(現:東北大学名誉教授)らの研究グループは、堆積岩の加熱実験を行い、比較的低い温度では二酸化硫黄が、高い温度では二酸化炭素がより多く放出されることを明らかにしました。さらに、大量絶滅を記録した地層から発見した加熱温度に制御されて生成する堆積有機分子(注1)の種類の変化から、火山活動が低温から高温へ移行したと推定しました。以上の結果から、三畳紀末の大量絶滅は次のプロセスで起きたことを提唱しました(図1):
●大規模火山活動のマグマが、比較的低温で堆積岩を加熱した結果、大量の二酸化硫黄が生成された。
●二酸化硫黄が成層圏に入り、硫酸エアロゾルを形成した。
●硫酸エアロゾルが太陽光を反射し、光合成阻害や地球寒冷化などにより生物の大量絶滅が起こった。
本研究の成果は、国際誌 「Earth and Planetary Science Letters」に掲載されるのに先立ち、1月12日付電子版に掲載されました。編集者により重要と判断され、特別早く出版されることになりました。
図1:三畳紀末大量絶滅の原因:地球寒冷化によりワニ系列の大型爬虫類は絶滅し、恐竜は生き延びて大型化し、生態系の頂点に君臨した。大規模火山地域は中央大西洋地域。(??Kunio Kaiho)
【用語解説】
(注1)堆積有機分子
生物が死後に堆積物中に残す有機分子と燃焼と熟成により生成する芳香族炭化水素の総称。前者は、安定な形に変化して保存されることが多い。粉末化した堆積岩から有機溶媒で抽出し、質量分析器により分子レベルで定量できる。
問い合わせ先
<研究に関すること>
東北大学名誉教授(元 理学研究科地学専攻)
海保 邦夫(かいほ くにお)
電話: 022-394-3931
E-mail: kunio.kaiho.a6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
<報道に関すること>
東北大学大学院理学研究科広報?アウトリーチ支援室
電話: 022-795-6708
E-mail: sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)