2021年 | プレスリリース?研究成果
銅微粒子の新たな有機物フリー合成技術を開発~水溶性卑金属塩を利用し、グリーンな合成手法を実現~
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 教授 蟹江澄志
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- あらたに開発した有機物フリー銅粒子合成プロセス(銅前駆体※1湿式還元法※2)は、卑金属※3塩を利用し、水中、大気下、室温という極めて低環境負荷の条件において、銅微粒子の合成が可能である。
- 有機物を使用する従来法に比べ、省資源?省エネルギー型の合成法である。
- 合成した銅微粒子は、有機物を含まないため、焼成※4した際に極めてガス発生が少なく、次世代エレクトロニクスの導電材料としての応用が期待できる。
【概要】
銅微粒子は金や銀といった貴金属※5微粒子よりも元素が豊富で安価ながら、貴金属類と同等の高い導電性と熱伝導性を有します。しかし既往の銅粒子合成法では各種の有機物が添加使用されており、その分解処理が必要でした。東北大学 多元物質科学研究所の蟹江澄志教授らと三井金属鉱業株式会社総合研究所の共同研究により、導電材料として期待される銅微粒子を環境に優しい条件(有機物フリー、水中、大気下、室温)で合成するプロセスを新たに開発しました。
今回開発した合成法では、水溶性の卑金属塩を用いることで、銅微粒子の合成が可能です。得られた銅微粒子は、有機物を含有していないため、焼成した際に極めてガス発生量が少なく、また低温で焼結※6することを確認しました。
本手法は、持続可能な社会の実現に向けた革新的な合成技術として期待できます。更には、高純度の金属微粒子の合成が可能であるため、これまでに無い新規機能を有する金属微粒子の創製が期待できます。
なお、本成果は、12月20日(月)付で、nature.comが管理するオープンアクセス電子ジャーナル誌の「Scientific Reports」誌に掲載されました。
図1. 開発した銅微粒子合成法の特徴
【用語解説】
※1. 前駆体
化学反応において、生成物の前の段階にある物質。ある組成の粒子を合成する際の原料となる化合物のこと。
※2. 湿式還元法
水溶液や非水溶液中で溶解、あるいは分散している金属化合物を還元剤により金属へと還元させる方法。還元剤や添加剤の種類、さらに各試薬の濃度を変更することで金属粒子の大きさや形状等を制御できる。
※3. 卑金属
空気中に放置すると酸化されやすい金属。一般的に貴金属ではない金属のことをさす。
※4. 焼成
材料を加熱して性質に変化を生じさせる工程。
※5. 貴金属
金?銀?白金?イリジウムなどの産出量が少なく貴重な金属。空気中で酸化されにくく、かつ化学変化されにくい性質を持つ。
※6. 焼結
加熱した際に粒子と粒子の間に結合が生じる現象。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所
教授 蟹江 澄志(かにえ きよし)
電話: 022-217-5165
E-mail:kanie* tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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