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不純物ドーピングによる硫化スズ薄膜のn型化に成功~有害元素を含まない実用的な薄膜太陽電池の実現に期待~

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所 助教 鈴木一誓
研究室ウェブサイト

〇多元物質科学研究所 助教 川西咲子
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 次世代ソーラーパネルの実用化に貢献するn型伝導性注1の硫化スズ薄膜の作製に成功
  • プラズマ化した硫黄注2を供給しながら塩素ドープ注3した硫化スズ薄膜を作製することでn型化に成功
  • pnホモ接合注4による硫化スズ薄膜太陽電池の高効率化に大きな期待

【概要】

硫化スズは、毒性のある元素を含まず、地球上に豊富に存在する元素のみから構成されることから、環境適応型の太陽電池材料として、次世代ソーラーパネルへの応用が期待されています。ただし高効率な発電のためには、p型伝導性とn型伝導性をもつ硫化スズを作り分け、それらを組み合わせたpnホモ接合を作る必要があります。しかし、通常の方法で作製された硫化スズ薄膜はp型伝導性をもっており、n型化が難しいことが障壁となっていました。東北大学 多元物質科学研究所の鈴木一誓助教、川西咲子助教らのグループは、有害元素を含まない実用的な硫化スズ薄膜太陽電池の作製に不可欠な、n型伝導性の硫化スズ薄膜の作製に世界で初めて成功しました。

研究グループは、硫化スズ薄膜のn型化を阻害する格子欠陥注5を低減する新しいプロセスを開発し、塩素ドープによって硫化スズ薄膜をn型化することに成功しました。この技術によって、実用的なpnホモ接合の硫化スズ薄膜太陽電池への道が拓かれました。

本研究成果は、2021年12月9日にPhysical Review Materials誌に掲載されました。

世界で初めて作製に成功した有害元素を含まないn型伝導性の硫化スズ薄膜。

【用語解説】

注1.n型伝導性
半導体には、電荷を運ぶキャリアが電子であるn型伝導性をもつものと、ホールであるp型伝導性をもつものがある。それぞれを、n型半導体やp型半導体とも呼ぶ。

注2.プラズマ化した硫黄
プラズマとは、固体?液体?気体に次ぐ、物質の状態である。気体分子にエネルギーを加えると、原子から電子が離れ、活性化したプラズマ状態となる。本研究では、気体の硫黄に高周波電場を印加してプラズマ化することで、薄膜中に取り込まれやすいようにしている。

注3. 塩素ドープ
半導体には、不純物を添加(ドープ)することで電気的特性が制御できるという性質がある。一般的にp型伝導性をもつ硫化スズは、ハロゲン元素(塩素や臭素)をドープすることでn型伝導性を示すようになることが焼結体や単結晶では報告されていたが、薄膜では成功した例がなかった。

注4.pnホモ接合
n型伝導性とp型伝導性を示す同一の半導体材料による接合。異種の半導体材料のpn接合のことを、pnヘテロ接合と言う。

注5. 格子欠陥
原子が規則正しく並んだ結晶において、その配列を乱す要素のこと。硫化スズでは、硫黄とスズが規則正しく並んでいるが、例えば硫黄が欠損すると配列が乱れてしまう。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
助教 鈴木一誓(すずき いっせい)
電話:022-217-5215
E-mail: issei.suzuki*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

助教 川西 咲子(かわにし さきこ)
電話:022-217-5155
E-mail: s-kawa*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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