2021年 | プレスリリース?研究成果
貝毒原因プランクトンの天敵を発見! ~寄生生物を用いた有毒プランクトン防除に期待~
【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 准教授 西谷 豪
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 麻痺性貝毒の原因となる有毒プランクトンの発生により、二枚貝(アサリ、カキ、ホタテガイ等)が毒化し、食中毒や水産物の出荷規制等による漁業被害が各地で報告されている。
- その有毒プランクトンに寄生して殺藻する寄生生物を日本で初めて発見し、それが寄生性渦鞭毛藻の一種であることを明らかにした。
- この寄生生物の単離?培養に成功するとともに、現場調査と室内実験により、それが有毒プランクトンに対する高い殺藻効果を持つことを確認した。
- さらに研究を進めることで、貝毒の発生?終息の予測、あるいは寄生生物を「生物農薬」として利用する有毒プランクトン防除法の開発への応用が期待される。
【概要】
貝毒とは、主に渦鞭毛藻などの有毒プランクトンを捕食した貝が毒を蓄積し、その毒化した貝を食べることで起こる食中毒である。貝毒が発生した貝類の出荷停止などにより、水産業に多大な被害をもたらす。
東北大学大学院農学研究科の西谷 豪 准教授らの研究グループは、全国で麻痺性貝毒を引き起こす原因となっている有毒プランクトン(Alexandrium属)に高い寄生性を有する新規の寄生性渦鞭毛藻(Amoebophrya sp.)を大阪湾から日本で初めて発見し、その単離?培養に成功した。なお、この寄生生物は、珪藻などの無害なプランクトンには寄生しない。
この寄生生物が有毒プランクトンに与える影響について、2020年の大阪湾における現場調査や室内培養実験を行ったところ、有毒プランクトンの70%以上に寄生が生じていることが明らかとなり、その存在が有毒プランクトン密度の減少(寄生された有毒プランクトンは、3日以内にすべて消滅する)に、大きく影響していることが示された。
この寄生生物に関する研究は、これまで日本では全く行われておらず、いつから?どこに?どのくらい存在しているのか、宿主(この場合は有毒プランクトン)がいない時期にどこで?どのような形で生き延びているのか明らかではなく、多くの謎が残されている。今後、寄生が起こりやすい環境条件を解明することで、その年の貝毒発生の規模や収束時期の予測に繋がる可能性がある。将来的には、この寄生生物を「生物農薬」として利用することによって、全国で発生する有毒プランクトン防除法の開発への応用が期待される。
本研究の成果は、2021年10月25日に国際誌「Harmful Algae」で公開されました。論文には、寄生の様子を録画した動画も付随しています。
通常光による写真(明るい背景)と特殊な蛍光をあてた際の写真(黒い背景)を示す。蛍光写真で赤く見えるのは宿主(有毒プランクトン)の葉緑体、緑が寄生生物。A?Bは寄生が起こっていない有毒プランクトン。C?Dでは、宿主の周りに1つの寄生生物が付着しているのが分かる。この1つが宿主の細胞内に侵入し、爆発的に増殖する。E?Fは感染初期を示し、寄生生物が宿主の細胞内で数十にまで増殖したことにより、緑色の蛍光部分が拡大している。G?Hは感染中期、I?Jは感染後期を示す。宿主の細胞内で数百まで増殖した寄生生物は、最終的に宿主の細胞を突き破り、細胞外へと出ていく(K?L)。その後、数百の寄生生物が水中に分散し、次の宿主を求めて泳ぎ出す。この一連のサイクルが、2-3日で完結する。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院農学研究科
生物海洋学分野
西谷 豪(ニシタニ ゴウ)
電話:022-757-4247
E-mail:ni5*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院農学研究科 総務係
TEL:022-757-4003
FAX:022-757-4020
Email:agr-syom*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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