2021年 | プレスリリース?研究成果
222 nm紫外線ランプの植物への悪影響に懸念 -254 nm紫外線(殺菌灯)とは植物への障害の作用が異なる-
【本学研究者情報】
〇生命科学研究科 准教授 日出間純
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 紫外線を利用したウイルス不活化技術に注目が集まっており、DNA損傷を誘発し、生物に重篤な障害を引き起こす254 nmの殺菌灯に比べて人体に影響が低い222 nm紫外線の利用が期待されている。
- 222 nm紫外線の生物影響に関する研究は、細菌、ウイルス、そしてヒト培養細胞、マウスで行われており、植物への影響に関する知見はほとんどなかった。
- 222 nmの紫外線が植物(シロイヌナズナ)の植物の表皮細胞、孔辺細胞(気孔を構成する細胞)を破壊し、重篤な障害を引き起こすことを明らかにした。
【概要】
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、紫外線を利用したウイルス不活化技術に注目が集まっています。222 nmの低波長紫外線は、これまで汎用的に利用されてきた254 nmの紫外線(殺菌灯)と比較して、人体への影響(目や皮膚への影響)が低いことから、今日、222 nm紫外線を用いた新型コロナウイルス感染症に対する感染対策への応用が期待されています。しかし同紫外線の植物に対する影響については知見がありませんでした。
東北大学大学院生命科学研究科の日出間純准教授の研究グループは、東北大学ナレッジキャスト、(株)コシダカ、オーク製作所との共同研究により、これまで調べられていなかった植物を対象に、222 nm紫外線が生物に与える影響を254 nmの紫外線(通称、殺菌灯)と比較しました。その結果222 nm紫外線は植物に対し、葉の表面の細胞、特に植物が二酸化炭素を取り込む気孔に直接障害を与え、破壊することで生育に重篤な障害を与えることを明らかにしました。本研究は、今後ウイルス不活化等のために広く利用されると期待される222 nm紫外線の植物への影響を初めて明らかにした注目すべき報告です。本研究結果は、2021年11月3日にPhotochemical & Photobiological Sciences誌に掲載されました。
図254 nm紫外線と222 nm紫外線が植物の葉に与える影響の違い
254 nm紫外線は葉の内部の葉肉細胞まで到達するため、葉肉細胞内の葉緑体とミトコンドリアに障害を与える。一方222 nm 紫外線は透過性が低いため、葉の表面だけに影響し、表皮に存在する孔辺細胞に障害を与え、これにより気孔の働きが損なわれてしまう。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 准教授 日出間純 (ひでま じゅん)
電話番号: 022-217-5690
Eメール: jun.hidema.e8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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