2021年 | プレスリリース?研究成果
細胞小器官同士が接する微小空間の新しい機能を発見ー脂質による新しい細胞内"物流"制御メカニズムが明らかにー
【本学研究者情報】
〇生命科学研究科 教授 田口友彦
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 小胞体注1とエンドソーム注2という2つの細胞小器官が接する領域で、異なる2つの脂質の交換輸送が起こっている
- 脂質の交換輸送は、膜輸送注3に際してエンドソーム膜が正常に分裂するのに必要である
- 膜接触部位を介した脂質交換輸送が制御する生体機能が解明された
【概要】
細胞内には様々な細胞小器官が存在しますが、それらは基本的に離れて存在すると考えられてきました。しかし近年、細胞小器官同士は部分的に接していることがわかり始め、教科書が書き換えられようとしています。新潟大学大学院医歯学総合研究科神経生化学分野の河嵜麻実特任講師、五十嵐道弘教授、中津史准教授、東北大学大学院生命科学研究科の田口友彦教授らのグループは、この細胞小器官同士が近づいて作られる微小空間(膜接触部位注4と呼ぶ)で脂質注5が交換されていること、そしてこの脂質の交換によって細胞小器官の膜の分裂が制御されていることを突き止めました。これは、細胞生物学の分野で近年注目されている膜接触部位の新機能を解明した大きな成果です。本研究は、東京医科歯科大学、秋田大学、東京大学、東北大学との共同研究で行われました。
【用語解説】
(注1)小胞体
細胞小器官の1つで、脂質やタンパク質などの生合成の場。網状の構造をとり、細胞内の隅々まで広がっている。
(注2)エンドソーム
細胞膜から膜輸送によって送られてきた生体物質を受け取り、それらを様々な細胞小器官に再配送する中継所として機能する細胞小器官。
(注3)膜輸送
細胞内でタンパク質などの生体物質を輸送する際、細胞膜や細胞小器官膜の一部が出芽して分裂することによって膜の小胞が形成され、これが細胞小器官の間でやりとりされる。この機構のことを膜輸送(もしくは膜交通)と呼ぶ。
(注4)膜接触部位
2つの異なる細胞小器官同士(もしくは細胞小器官と細胞膜)が接する微小な膜領域。
(注5)脂質
細胞膜や細胞小器官膜を作る原材料としてだけでなく、エネルギー源として利用されたり、シグナル伝達をコントロールしたりと様々な重要な役割を担う生体物質。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 田口 友彦(たぐち ともひこ)
TEL: 022-795-6676
E-mail:tomohiko.taguchi.b6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院 生命科学研究科広報室
TEL:022-217-6193
E-mail:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)