2021年 | プレスリリース?研究成果
宇宙旅行によって血圧や骨の厚みが変化するしくみを解明 ?"宇宙腎"のはたらき?
【本学研究者情報】
〇医学系研究科酸素医学分野 准教授 鈴木教郎
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 1ヶ月間の宇宙旅行から帰還したマウスの腎臓注1では、血圧と骨の厚さを調節する遺伝子のはたらきが変動していることを発見
- 1ヶ月間の宇宙旅行によって血液中の脂質が増えることを発見し、腎臓では余剰の脂質の代謝?排泄に関わる遺伝子が活性化していることを解明
【概要】
民間人だけでの宇宙旅行が成功し、人類にとって宇宙が身近になりつつあるなか、宇宙旅行時代に備えて、宇宙放射線や微小重力などの宇宙環境が人体に及ぼす影響を理解する必要があります。東北大学大学院医学系研究科の鈴木教郎准教授(酸素医学分野)と山本雅之教授(医化学分野)らのグループは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と筑波大学との共同研究において、1ヶ月間の宇宙滞在から帰還したマウスを解析し、宇宙旅行の際に腎臓が中心となって血圧や骨の厚さなどを変化させることを発見しました。
本研究グループは2018年に世界で初めて遺伝子組換えマウスの宇宙旅行を達成し、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」に31日間滞在したマウスの解析注2を実施しています。今回の研究では、これらのマウスから採取した検体を解析し、宇宙旅行後のマウスの腎臓で、骨量、血圧、脂質代謝の調節に関係する遺伝子のはたらきが変動することを発見しました。今回の成果によって、宇宙環境が生体に変化を引き起こすしくみの一部が明らかとなり、宇宙旅行における腎機能管理の重要性が提唱されました。本研究成果は、2021年11月9日に国際腎臓学会誌(Kidney International)のオンライン版で公開されました。
図.宇宙旅行の際には腎臓のはたらきによって血圧?骨量?脂質代謝が変化する
地上では重力に逆らって血液を循環させたり、姿勢を維持したりする必要があります。宇宙空間では、重力がほとんどないため、血圧や骨の厚さが変化します。今回の研究では、宇宙滞在による血圧と骨の変化に腎臓の遺伝子が関与することを宇宙旅行から帰ってきたマウスを使って明らかにしました。また、重力に抵抗するためのエネルギーが不要となるため、宇宙滞在中に脂質が余ることを発見し、余った脂質を腎臓が代謝?排泄する役割を担うことを解明しました。
【用語解説】
注1. 腎臓:血液をろ過して、老廃物を尿中に排泄する臓器。尿の生成のほかに、赤血球を増やしたり、血圧を上昇させる機能も有する。また、リンおよびカルシウムの体内濃度を調節する機能も備えている。カルシウム濃度は骨量と相関するため、腎臓は骨の太さの調節にも関与する。
注2. 「きぼう」に31日間滞在したマウスの解析: 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の第3回小動物飼育ミッションとして、2018年4月に12匹のマウスを米国ケネディ宇宙センターから打ち上げ、ISS「きぼう」で31日間飼育した。その後、すべてのマウスが生存した状態で帰還し、血液や臓器などの解析が進められた(2020年9月9日プレスリリース)。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科 酸素医学分野
准教授 鈴木教郎
電話番号:022-717-8206
Eメール:sunorio*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
電話番号:022-717-8032
FAX番号:022-717-8187
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)