2021年 | プレスリリース?研究成果
臍帯血DNAメチル化情報の公開 ~胎児期の情報を集積した世界初の試み~
【本学研究者情報】
〇東北メディカル?メガバンク機構母児医科学分野 教授 菅原準一
jMorpウェブサイト
【発表のポイント】
- 妊娠期間中の胎内環境を反映する臍帯血*1に特有の有核赤血球*2のDNAメチル化*3情報15例分と、在胎週数*4別の臍帯血DNAメチル化情報92例分の統計情報を、マルチオミックスデータベース(iMETHYL*5とjMorp*6)に公開します。
- 東北メディカル?メガバンク計画では、これまで末梢血由来血球細胞*7のDNAメチル化情報を公開してきましたが、今回、臍帯血有核赤血球の情報を取得したことで、臍帯血DNAを用いた症例対照研究が可能となりました。
- 胎児期に受けたストレスなど胎児期の環境因子が、生涯に渡って疾患発症リスクを上昇させる可能性など、児にどのように影響を残すのかを研究するための基盤情報として活用されることが期待されます。
【概要】
東北メディカル?メガバンク計画では、三世代コホート調査*8に参加した妊婦の方々の臍帯血、および岩手医科大学附属病院産婦人科を受診した妊婦の方々から分娩時に収集した臍帯血中の有核赤血球のDNAメチル化状態を解析し、国内外の研究者が参照できるデータベースとして公開しました。対象としたのは、有核赤血球15名の統計量と、母児の主な周産期疾患症例を除外した、妊娠31週から42週までの92例の統計量です。
iMETHYLおよびjMorpにて公開する在胎週数別臍帯血DNAメチル化情報の要約統計量から、在胎週数に沿って変化する、変化しないゲノム領域を区別することが可能になります。また、採取直後に解析した有核赤血球のDNAメチル化情報を利用することで、検体の移送や保管等により生じる影響(バイアス)を補正し、臍帯血を対象とした様々な症例対照研究の実施が可能となります。同様に、有核赤血球のDNAメチル化情報の要約統計量を用いることで、症例対照研究の際に細胞組成量を補正することが可能になります。これらにより、胎児が母体内で経験するエピジェネティックな変化*9を推定することができます。
iMETHYL画面イメージ
【用語解説】
*1 臍帯血:母体と胎児をつなぐ臍帯に含まれる血液。
*2 有核赤血球:核を含んだ赤血球のこと。胎児や新生児の末梢血および臍帯血に含まれる。乳児期以降の末梢血には通常含まれない。
*3 DNAメチル化:DNA分子がメチル基による修飾を受ける現象。とくにDNA塩基のひとつであるシトシンで生じる現象を指すことが多い。DNAメチル化状態は環境要因によって変化することがあり、DNAメチル化状態の変化は遺伝子の働きを変化させることがある。
*4 在胎週数:分娩予定日を40週0日とした分娩時の妊娠週数。
*5 iMETHYL:IMMにて管理しているウェブデータベースおよびゲノムブラウザ(iMETHYL:integrative database of human DNA methylation)。東北メディカル?メガバンク計画の地域住民コホート調査で収集したDNAメチル化情報の要約統計量などを公開している。 http://imethyl.iwate-megabank.org/
*6 jMorp:ToMMoが公開するデータベースである日本人多層オミックス参照パネル(jMorp:Japanese Multi Omics Reference Panel)。全ゲノムリファレンスパネル、日本人基準ゲノム配列、メタボローム解析情報などを収載する。 https://jmorp.megabank.tohoku.ac.jp/
*7 末梢血由来血球細胞:末梢血は血管中の通常の血液のことを指す。東北メディカル?メガバンク計画で公開している情報は、これまで末梢血由来の血球細胞に限られていたが、今回初めてこれ以外である臍帯血の解析結果を公開した。
*8 三世代コホート調査:ToMMoが実施する、祖父母?父母?児を対象としたコホート調査。生活習慣や生理機能の情報、生体試料を収集している。臍帯血の採取は、参加妊婦さんが出産したそれぞれの産科医療機関にて行われる。
*9 エピジェネティックな変化:DNAの塩基配列の変化を伴わない、遺伝子の働きの変化。DNAメチル化が代表例である。また、エピジェネティックな現象の総体をエピジェネティクスと呼ぶ。
問い合わせ先
(本研究の臨床情報に関すること)
東北大学東北メディカル?メガバンク機構
地域医療支援部門長 菅原 準一
電話番号:022-273-6283
Eメール:jsugawara*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道担当)
東北大学東北メディカル?メガバンク機構
広報戦略室長 長神 風二(ながみ ふうじ)
電話番号:022-717-7908
ファクス:022-717-7923
Eメール:pr*megabank.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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