2021年 | プレスリリース?研究成果
がんが免疫から逃げるのを許さない クルクミン類縁体GO-Y030によるがん免疫療法の効果増強
【本学研究者情報】
〇医学系研究科器官解剖学分野 教授 大和田祐二
研究室ウェブサイト
【研究のポイント】
- クルクミン注1類縁体GO-Y030による抗腫瘍効果のメカニズムを明らかにした。
- GO-Y030と抗PD-1抗体注2を併用し、腫瘍周囲に集積する制御性T細胞注3の数を減少させた。
- GO-Y030は免疫チェックポイント阻害剤の効果を増強する可能性が示された。
【研究概要】
がん治療のための抗PD-1抗体を用いた抗腫瘍免疫療法は、がん細胞の周りに集まる免疫細胞(T細胞)を活性化させ、がんの増殖や浸潤を抑制する新たな治療法として注目されています。しかし、抗PD-1抗体による制御性T細胞の活性化をいかにして低下させるかが腫瘍免疫療法の一つの課題となっています。
東北大学大学院医学系研究科の器官解剖学大和田祐二教授、秋田大学大学院医学系研究科腫瘍内科学柴田浩行教授、米国NIH粘膜免疫ユニット丸山貴司研究員らのグループは、これまでに、腫瘍免疫を抑える制御性T細胞をクルクミン類縁体であるGO-Y030が抑制することを見出していました。今回、抗PD-1抗体を用いた抗腫瘍免疫療法注4にGO-Y030を併用することで、抗PD-1抗体の効果が増強することをマウスモデルで示しました。本研究を発展させることで、腫瘍免疫療法の効果をさらに向上させ、有効な治療法の確立に寄与することが期待されます。
本研究成果は、2021年9月16日にCancer Science誌(電子版)に掲載されました。
図.GO-Y030の抗腫瘍効果
GO-Y030は、がん細胞の増殖を直接抑制するほか、制御性T細胞の機能制御を介して、抗PD-1抗体によるがん免疫療法の効果を増強する。
【用語解説】
注1. クルクミン:ショウガ科植物のウコンの根に含まれる成分で、抗酸化効果や肝機能改善効果などが知られている。
注2. 抗PD-1抗体:T細胞上の免疫抑制シグナル分子PD1に結合しT細胞の活性化抑制を解除する。
注3. 制御性T細胞:T細胞の一種で、自己免疫の防止や炎症の抑制に重要な役割を担う。一方で、がん細胞が免疫系細胞からの攻撃を逃れるための免疫逃避の原因となることが知られている。
注4. 抗腫瘍免疫療法:免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体によりエフェクターT細胞上のPD-1 をブロックし、がん細胞のPD-L1との結合を阻害することで、がん細胞が免疫細胞の攻撃から逃れることを防ぐ。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科器官解剖学分野
教授 大和田 祐二
電話番号:022-717-8039
Eメール:owada*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
電話番号:022-717-8032
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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