2021年 | プレスリリース?研究成果
産後うつは産後1年経過しても出現する ~長期的なスクリーニングやケアの体制構築の必要性~
【本学研究者情報】
〇医学系研究科精神神経学分野 教授 富田博秋
研究室ウェブサイト
【研究のポイント】
- 産後うつ注1は、通常数か月以内に発症すると言われるが、今回の研究で、長期にわたって産後うつ症状を評価したところ、産後1年のうつ症状の有病率は、産後1か月と同じだった。
- 産後1年にうつ症状を呈していた者のうち、約半数は産後1か月時点ではうつ症状を呈していなかった。
- 妊娠中の心理的不調が、産後1か月、産後1年のうつ症状と関連していた。
- これらの知見により、産後1年間はうつ症状が出現する可能性に注意し、適切な時期にスクリーニングとケアを行う必要が明らかになった。
【概要】
産後うつは産後数か月以内に発症するとされ、発症に関わる心理社会的リスク因子が報告されてきました。しかし、産後1年までの経過やそれに関わる心理社会的リスク因子についての研究は不十分でした。東北大学大学院医学系研究科(兼 東北大学病院)の菊地紗耶助教、富田博秋教授、東北メディカル?メガバンク機構の栗山進一教授、小原拓准教授らのグループは、東北メディカル?メガバンク計画注2において、三世代コホート調査注3に参加した妊婦を対象として、産後1年までの産後うつの経過とそれに関わる心理社会的リスク因子を分析しました。その結果、産後1か月と同様に産後1年でも同程度の産後うつ病が出現し、産後1年にうつ症状を呈した母親のうち、約半数は産後1か月時点ではうつ症状を呈していなかったことが判明しました。本研究は、産後1年経過してもうつ症状が出現するリスクに注意し、産後直後だけでなく、より長期的な視点に立ってスクリーニングやケアの体制を構築する必要性を示唆しています。
研究成果は、2021年9月4日、Journal of Affective Disorders(電子版)に先行掲載されました。
【用語解説】
注1. 産後うつ:産後、多くの母親に3日以内に悲しさや惨めさなどの感情が出現し、2週間以内に治まるが、この状態はマタニティーブルーと呼ばれる。さらに、顕著な抑うつ症状が数週間から数か月間続き、日常生活に支障が出ることで、うつ病の診断基準を満たす状態になる場合、「産後うつ(病)」と呼ばれる。「産後うつ」は、出産後、約10~20%の女性に発症すると試算される。近年、自殺との関連性が注目されており、対策が求められている。
注2. 東北メディカル?メガバンク計画:東北メディカル?メガバンク計画は、東日本大震災からの復興事業として2011年度から始められ、被災地の健康復興と、個別化予防?医療の実現を目指している。東北メディカル?メガバンク機構(ToMMo)と岩手医科大学いわて東北メディカル?メガバンク機構を実施機関として、東日本大震災被災地の医療の創造的復興および被災者の健康増進に役立てるために、合計 15 万人規模の地域住民コホート調査および三世代コホート調査を2013年より実施し、収集した試料?情報をもとにバイオバンクを整備している。東北メディカル?メガバンク計画は、2015年度より、AMEDが本計画の研究支援担当機関の役割を果たしている。
注3. 三世代コホート調査:ToMMoが2013年7月より開始した、妊婦さんと生まれたお子さんを中心にしたコホート調査。2017年3月までに7万人以上の参加者を得ている。世界的に見ても貴重な家系情報付きの大規模コホート調査である。なお、コホート調査とはある特定の人々の集団を一定期間にわたって追跡し、生活習慣などの遺伝要因?環境要因などと疾病発症の関係を解明するための調査のこと。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野
教授 富田 博秋
電話番号:022-717-7262
Eメール:psy*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(取材に関すること)
東北大学東北メディカル?メガバンク機構広報戦略室
電話番号:022-717-7908
FAX番号:022-717-7923
Eメール:pr*megabank.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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