2021年 | プレスリリース?研究成果
腸管と乳腺はつながっている! ~腸内微生物が母乳中の抗体産生を促す~
【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 教授 野地智法
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
母乳中の抗体産生に関するメカニズムを、以下の通り、明らかにしました。
- 母乳中の抗体が産生される際には、腸管から乳腺に抗体産生細胞が移動している。
- 特定の腸内微生物が哺育期の母体の腸管の免疫機能を高めている。
【概要】
母乳中の抗体は、産子の健康に欠かせない重要な免疫物質です。
東北大学大学院農学研究科 食と農免疫国際教育研究センターの野地智法教授、宇佐美克紀博士および、東京大学医科学研究所粘膜免疫学部門の清野宏特任教授、大阪大学微生物病研究所の佐藤慎太郎特任准教授(大阪市立大学大学院医学研究院?ゲノム免疫学?准教授を兼務)、大阪大谷大学薬学部の戸村道夫教授、東北大学東北メディカル?メガバンク機構の菅原準一教授、カリフォルニア大学デービス校のRussell C. Hovey 教授らの研究グループは、母乳中の抗体(免疫グロブリン※1)が作られるメカニズムを明らかにしました。
母乳中の抗体は、形質細胞(リンパ球の一つであるB 細胞※2 より分化した細胞)から 分泌され、母子移行されるタンパク質の一つです。今回、母乳中の抗体産生に関わる 形質細胞の大半は、乳腺から遠く離れた腸管に由来していることを明らかにしました。さらには、母乳中の抗体が産生される際に腸管の免疫機能が高められるためには、腸管内に生息する特定の腸内微生物(例:B. acidifaciens、P. buccalis)の存在が重要であることを突き止めました。
本研究を通して、ヒトや動物といった哺乳動物の母乳を介した免疫機能(母乳中の抗体産生)を強化するための着眼点が見出されました。今後、哺育期の母体を対象としたプロバイオティクス開発などへの応用が期待されます。
本研究成果は、2021 年9 月7 日午前11 時(米国東部時間)に米国Cell Press 社が発行する科学誌Cell Reports に掲載されました。
図:母乳中に抗体が産生されるメカニズム
【用語解説】
※1 免疫グロブリン
一つの抗原(異物)に対する特異性を有したタンパク質で、B細胞より分化した形質細胞から分泌される。通称、抗体。
※2 B 細胞
リンパ球の一種。一つのB 細胞は、抗原(異物)を特異的に認識する一種類の受容体 (B 細胞受容体)を発現している。B 細胞から分化した形質細胞が分泌する抗体(免疫グロブリン)が有する抗原特異性は、分化前のB 細胞が発現するB 細胞受容体の抗原特異性と同じである。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院農学研究科 食と農免疫国際教育研究センター
教授 野地智法
TEL: 022-757-4312
E-mail: nochi*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院農学研究科 総務係
TEL: 022-757-4003
E-mail: agr-syom*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)