2021年 | プレスリリース?研究成果
スノーボールアース後に真正細菌、その後、真核生物繁栄 6 億5?3 千万年前のスノーボールアースに微量の光合成生物
【本学研究者情報】
〇理学研究科地学専攻 名誉教授 海保邦夫
研究者紹介
【発表のポイント】
- 動物の初期進化の時代にスノーボールアース(以下、全球凍結)が生物に与えた影響を考察した。
- 堆積岩中の有機分子を分析し、光合成生物、真正細菌、真核生物のダイナミックな盛衰を解明した。
- 全球凍結中には光合成生物が少ないながら存在していた証拠を得た。
- 凍結中に増加した二酸化炭素が異常に高い気温を引き起こし、地球を解氷した後、二酸化炭素が海に吸収される間にバクテリアが増加し、吸収後に真核生物が栄えた。
【概要】
地球では過去に少なくとも3 度、ほぼ地球全体が凍結する「全球凍結」と呼ばれる氷河期があったことがわかっています。これらの時期に大陸氷河の移動によって形成された地層(氷成層)は、当時の赤道域にまで分布しています。典型的な氷成層は炭酸塩岩に覆われていますが、これは大気中に蓄積した二酸化炭素による温室効果によって全球凍結が終了した後に、大気中の二酸化炭素が海で沈殿し形成されたものと考えられています。東北大学大学院理学研究科地学専攻の静谷あてな氏(博士課程後期3 年、現:福井県立恐竜博物館研究職員)と海保邦夫教授(現:東北大学名誉教授)らは、6 億5?3 千万年前(注1)の全球凍結―解氷時に形成されたこれらの地層の岩石試料を分析し、全球凍結中にも光合成生物(藻類)が存在した証拠、及び、解氷後に生物量極小を経て真正細菌 が増え、その後、真核生物が栄えた証拠を得ました。これらの証拠から、解氷時の異常に高い気温で生物量極小化し、気温が下がる途中で真正細菌が増え、気温 が普通の状態になると真核生物が増えたと解釈できます(図)。
本研究の成果は、国際誌「Global and Planetary Change」2021 年特集号に掲載されるのに先立ち、8 月17 日付電子版として掲載されました。
図:全球凍結時とその後の地球環境と生物の変化。
黒矢印は時間変化を示す。複数の大陸が衝突してひとつになった超大陸発達時には、CO2放出量が減少し氷期 になる。氷が海表面を覆い、CO2が吸収されなくなり、大気中CO2濃度が上昇することで全球凍結後の解氷は起きる。赤字は今回の発見。?海保邦夫
【用語解説】
(注1)
今回研究した時代はクリオジェニアン紀からエディアカラ紀初期の時代。
問い合わせ先
<研究に関すること>
東北大学名誉教授
海保 邦夫(かいほ くにお)
E-mail:kunio.kaiho.a6*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
<報道に関すること>
東北大学大学院理学研究科
広報?アウトリーチ支援室
E-mail:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)