2021年 | プレスリリース?研究成果
常圧二酸化炭素からプラスチックの直接合成に世界で初めて成功 ~二酸化炭素の化学固定化に寄与する脱水剤を使用しない触媒プロセスを新たに開発~
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科 教授 冨重圭一
研究室ウェブサイト
【概要】
大阪市立大学人工光合成研究センター 田村正純准教授、東北大学大学院工学研究科応用化学専攻 冨重圭一教授、日本製鉄株式会社先端技術研究所 中尾憲治課長らは、脱水剤を用いずに、常圧二酸化炭素とジオール※1から脂肪族ポリカーボネートジオールの直接合成を行う触媒プロセスの開発に世界で初めて成功し、酸化セリウム触媒を組み合わせることで、高収率かつ高選択率で脂肪族ポリカーボネートジオールを合成できることを学会誌「Green Chemistry」上で発表しました。
ポリカーボネートジオールは、プラスチックに代表されるポリウレタン合成の重要中間体であり、現在、ホスゲン※2や一酸化炭素を原料にして合成されていますが、これら原料は有毒なため、グリーンケミストリー※3の観点から原料を代替する技術の開発が求められています。代替原料に二酸化炭素を用い、ジオールと反応させてポリカーボネートジオールを合成する手法は、水のみを副生するグリーンな反応系として注目されているものの、高収率を得るには、高圧二酸化炭素や脱水剤を用いる必要がありました。本研究で見出した手法はこれら課題を克服するもので、酸化セリウム触媒を用い、ジオールに常圧の二酸化炭素を吹き込むことにより、生成した水を反応系外に除去することが可能になり、目的のポリカーボネートジオールを高選択率かつ高収率で得ることに成功しました。
本研究成果は、2021年7月26日(月)に『Green Chemistry (IF=10.18)』にオンライン掲載されました。
【用語解説】
1:ジオール
2つの水酸基(OH基)が2個の異なる炭素に結合している化合物の総称
2:ホスゲン
別名、塩化カルボニル。非常に反応性が高いため、様々な原料として利用される一方、毒性も非常に強く、人体には目を激しく刺激し、窒息性の毒性を示す。
3:グリーンケミストリー
化学品などの化合物の設計、合成、応用、廃棄までにおいて、人体および環境への負荷を低減しようとするコンセプトと、そのための技術の総称。
問い合わせ先
<研究に関して>
東北大学大学院工学研究科 応用化学専攻
教授 冨重 圭一
TEL: 022-795-7214
E-mail: keiichi.tomishige.a1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
<報道に関して>
東北大学大学院工学研究科 情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)