2021年 | プレスリリース?研究成果
外部刺激に応答可能な極薄の多孔質薄膜材料の開発 ~イオン選択性をもったスマートマテリアル~
【本学研究者情報】
〇本学代表者所属?職?氏名:大学院工学研究科 応用化学専攻?教授?三ツ石 方也
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- わずか8ナノメートル(nm: 1メートルの10億分の1)の厚みをもった多孔質薄膜表面を外部刺激に対して応答可能な分子で均一に覆うことに成功した。
- 溶液pH(注1)を調整することで多孔質薄膜表面の電荷に応じてイオン透過性を制御することに成功した。
- 極めて薄い膜厚と制御された表面特性を生かした高効率な分離膜や電気化学センサ材料のための選択層としての応用が期待される。
【概要】
高い選択性をもった分離膜やセンサ材料の開発には、選択層としてはたらく多孔質薄膜材料の構造や表面特性をnmまたは分子スケールで制御することが求められます。今回、東北大学の石﨑裕也博士研究員、山本俊介助教、三ツ石方也教授らの研究グループは、かご型シルセスキオキサン(注2)を有する高分子薄膜を用いることで、わずか8 nmの膜厚を持ち、細孔サイズを数nmスケールで制御可能な多孔質SiO2超薄膜の作製に成功しました。さらに、得られた多孔質SiO2超薄膜の表面を外部刺激(pH)に対して応答可能な分子で均一に覆うことで、プラスやマイナスといった電荷を帯びたイオンの透過性を、外部のpHに応じで制御することに成功しました(図1)。本研究の成果は極めて薄い膜厚と制御された表面特性を生かした高効率な分離膜や電気化学センサ材料のための選択層としての応用が期待されます。
本研究成果は2021年4月26日(米国時間)に米国化学会発行の科学誌「Langmuir」でオンライン公開され、Supplementary Coverにも選出されました。
図1 今回開発した外部刺激に応答可能な多孔質SiO2超薄膜のイオン透過性制御の様子を表した模式図。表面修飾していない多孔質SiO2超薄膜を用いた場合では、溶液pHを変化させてもイオンの透過性に変化が見られない(左図●印)。一方、表面修飾したものについては、低pH条件(酸性)下において、陰イオンのみを選択的に膜内に透過させることができる(左図▲印と右図)。
【用語解説】
(注1) pH
水溶液中の水素イオン濃度を表す指標。pH = -log[H+]で定義され、pHが1変化すると水素イオン濃度が10倍(または1/10)になる。pHが小さくなるほど酸性、大きくなるほどアルカリ性となる。
(注2) かご型シルセスキオキサン
化学式(RSiO1.5)nで定義されるかご型構造をした分子で、Si-O結合からなる無機コアとRで表される有機置換基から形成される。ハイブリッド材料の一種で、置換基Rに応じた広い設計自由度によって、様々な材料に組み込むことができ、有機物の持つ柔軟性や透明性と無機物のもつ耐久性を同時に実現することができる。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 応用化学専攻 機能高分子化学分野
担当:三ツ石 方也 教授
電話: 022-795-7230
E-mail: masaya*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室
担当:沼澤 みどり
電話: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)