2021年 | プレスリリース?研究成果
マンガン合金トンネル磁気抵抗素子の高性能化に成功 -新材料トンネル磁気抵抗素子の産業応用に前進-
【本学研究者情報】
〇本学代表者所属?職?氏名:材料科学高等研究所?助教?鈴木 和也
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 独自に開発した2つの新磁性材料をナノスケールで高度に融合
- 素子の磁気抵抗効果を大幅に増大させることに成功
- 大容量の不揮発性磁気抵抗メモリ等への産業応用展開に向けた大きな一歩
【概要】
東北大学材料科学高等研究所の鈴木和也助教は、同所属の水上成美教授らと共同で、垂直磁化マンガン合金を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子の高性能化に成功しました。大容量の不揮発性磁気抵抗メモリ(MRAM)等の産業応用展開に大きく貢献する成果です。
本研究では、同グループが独自に開発を進めてきたMRAM応用に理想的な磁気特性を有する垂直磁性材料マンガンガリウム合金に、新たに独自に開発を進めた準安定コバルトマンガン合金をナノスケールで高度に融合した人工のナノ反強磁性体を開発しました。この複合材料を用いることにより、当該垂直磁性材料を用いたTMR素子のTMR特性を飛躍的に向上させることに成功しました。
本成果は、大容量MRAMのみならず、貴金属を含まないマンガン合金の有するユニークな磁気特性を利用したTMR素子の産業応用展開にも貢献するものです。
本研究は、4月29日(米国時間)に米国の応用物理学分野の速報学術誌「Applied Physics Letters」の電子版に掲載されました。
図1 (a) 垂直磁化型TMR素子の基本構造図です。厚さ1-2ナノメートルの絶縁体薄膜(トンネルバリア)を2つの垂直磁化した磁性体薄膜で挟んだ接合構造を持つ素子であり、素子の垂直方向に電圧を印加するとトンネル効果によって接合に電流が流れ、磁化の向きに応じて電気抵抗値が変わるTMR効果が発現します。(b) TMR素子の電気特性とメモリセルの概念図です。TMR素子は磁場だけでなく、片側の磁性体のスピンの向きをTMR素子に流れる電流によって変えることができます。(スピントランスファートルク方式)この素子とトランジスタを組み合わせて磁性体のスピンの向きを情報の記憶に用いることにより電気を切っても情報が消えないメモリ素子のコアとなります。磁性体に垂直磁化材料を用いると、面内磁化した磁性体を用いるよりも素子の大きさをより小さく、高密度に配置できるためMRAMの記憶容量を向上させることができます。特に垂直磁化材料に正方晶マンガン合金材料を用いることにより、記憶素子の性能を飛躍的に向上させることが可能になると期待されています。
問い合わせ先
<研究に関すること>
東北大学 材料科学高等研究所
鈴木 和也 (スズキ カズヤ)
Tel: 022-217-5983
e-mail: kazuya.suzuki.d8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
<報道に関すること>
東北大学 材料科学高等研究所 広報戦略室
Tel: 022-217-6146
e-mail: aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)