2021年 | プレスリリース?研究成果
歩いて腎臓を守る:退院後の自主的な歩数管理がカギ -心筋梗塞発症後の身体活動量を高く保つことは腎機能低下を抑制する-
【本学研究者情報】
〇本学代表者所属?職?氏名:大学院医学系研究科内部障害学分野?教授?上月 正博
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 急性心筋梗塞注1を発症すると腎機能が低下しやすく、腎機能の低下は急性心筋梗塞患者の生存率の悪化につながる。
- 急性心筋梗塞患者の腎機能を維持?改善する治療法の確立は非常に重要な課題である。
- 急性心筋梗塞発症後の身体活動量を高く保つことは、慢性腎臓病注2合併の有無に関わらず、腎機能低下の抑制につながる。
【概要】
急性心筋梗塞等の虚血性心疾患を発症すると、腎機能が低下しやすい上に、急性心筋梗塞患者が腎機能障害を併存すると、その後の総死亡率や心血管に関連する死亡が増加することが報告されています。
東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野の大学院生佐藤聡見(研究当時)と上月正博教授らのグループは、急性心筋梗塞患者において、発症後の運動量(身体活動量)を高く保つことが腎機能低下の抑制につながることを明らかにしました。
これまで当研究グループは急性心筋梗塞患者において、発症後の身体活動量を高く保つことが腎機能低下の抑制につながることを報告してきました。今回の報告では調査規模を拡大し、多施設共同研究により発症後6ヵ月間の縦断的な調査を実施し、急性心筋梗塞発症後の身体活動量を高く保つことは、慢性腎臓病合併、非合併に関わらず、腎機能低下の抑制につながることを明らかにしました。
これにより、急性心筋梗塞患者の身体活動量管理が重要な合併疾患である慢性腎臓病の進行抑制や発症予防に寄与する可能性が示唆され、再発の予防や生存率の改善につながることが期待されます。
この研究成果は、2021 年3月22日にJournal of Cardiology 誌(電子版)にオンライン掲載されました。
図1.急性心筋梗塞発症後の身体活動量と腎機能変化との関係
【用語解説】
注1. 急性心筋梗塞:心臓に酸素や栄養を送る動脈(冠動脈)が血栓形成等により閉塞し、心筋が壊死した状態。早期治療しないと致死率が非常に高い疾患であり、発症後は迅速な冠動脈の血行を回復させることの可否が救命率に影響する。冠動脈の血行を回復させるための治療は、カテーテルを用いた冠動脈の拡張治療や外科的な冠動脈バイパス手術が一般的。
注2. 慢性腎臓病:慢性に経過するすべての腎臓病を指す。慢性腎臓病の定義は、(1)たんぱく尿などの尿異常、画像診断や血液検査、病理所見で腎障害が明らかである状態、(2)腎臓が老廃物を尿中へ排泄する能力である糸球体濾過量が60ml/分/1.73㎡未満の状態のいずれか、または両方が3ヵ月以上続く状態とされる。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野
教授 上月 正博(こうづき まさひろ)
電話番号:022-717-7351
Eメール:kohzuki*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
電話番号:022-717-8032
FAX番号:022-717-8931
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)