2021年 | プレスリリース?研究成果
糖尿病の治療薬が多発性肝嚢胞の肝病変を抑制する -メトホルミンが肝嚢胞の病態進行を抑える-
【本学研究者情報】
〇本学代表者所属?職?氏名:大学院医学系研究科内部障害学分野?教授?上月 正博
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 肝臓に嚢胞と呼ばれる空間ができ、それが徐々に拡大する多発性肝嚢胞(たはつせいかんのうほう)注1 に対する薬物療法で、保険収載されているものはない
- 多発性肝嚢胞モデルラットに対するメトホルミン注2の効果を検証
- 12週間のメトホルミン投与によって、肝嚢胞や肝線維化が改善することを確認
【概要】
多発性肝嚢胞は、肝臓に嚢胞と呼ばれる空間ができ、それが徐々に拡大する、遺伝性肝疾患です。大きくなった嚢胞は臓器を圧迫することで、呼吸が困難に感じたり腹部が張る感じがしたりするなどの症状がでるため、「生活の質(Quality of Life:QOL)」が低下しやすいと言われています。東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野の佐藤陽一大学院生、上月正博教授、東北医科薬科大学リハビリテーション学 伊藤修教授らのグループは、糖尿病の治療薬であるメトホルミンが、多発性肝嚢胞モデルラットの肝病変に対して、抑制効果があることを確認しました。さらに、ラットの肝臓切片を解析すると、嚢胞を取り囲む細胞(胆管上皮細胞)の細胞増殖が抑制されていました。2型糖尿病の治療薬として一般的に使用されているメトホルミンが、多発性肝嚢胞の治療にも有用であると期待されます。
この研究成果は、2021年1月13日にAmerican Journal of Physiology Gastrointestinal and Liver Physiology誌(電子版)に掲載されました。
図1.図の白い部分が嚢胞。メトホルミンの使用で肝嚢胞が減少する
【用語解説】
注1. 多発性肝嚢胞:肝臓に嚢胞という袋が生じ、腹部を圧迫していく病気。長い経過の中で徐々に嚢胞が増大する。腹部の臓器が圧迫されて呼吸困難感や運動制限が生じる可能性がある。
注2. メトホルミン:2型糖尿病の第一選択薬。ビグアナイド系薬剤に分類される経口糖尿病治療薬の一つ。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野
教授 上月 正博(こうづき まさひろ)
電話番号:022-717-7351
Eメール:kohzuki*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
東北大学病院広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)