2020年 | プレスリリース?研究成果
材料内部の欠陥を3次元で可視化できる高分解能超音波映像法を開発 -安全?安心な社会の実現や工業製品の国際競争力強化に貢献-
【発表のポイント】
- 構造物や工業製品の内部欠陥を高分解能で3次元映像化できる超音波計測法を開発
- 高い信頼性での強度評価や欠陥発生メカニズムの解明に道筋
- 安全?安心な社会の実現や工業製品の国際競争力強化への貢献に期待
【概要】
構造物や工業製品を壊さずに欠陥計測を行う非破壊評価技術の確立は重要な課題となっています。外からは見えない内部欠陥の計測法としては、超音波(注1)が幅広く用いられ、最近では、医療分野で開発された超音波フェーズドアレイ(注2)が工業分野に応用されるなどしています。しかし、内部に発生する複雑な3次元形状の欠陥は、最新の超音波フェーズドアレイ装置でも、素子数不足により、2次元映像化に限られていました。
東北大学大学院工学研究科の小原良和准教授らの研究グループは、米国ロスアラモス国立研究所との国際共同研究により、圧電探触子送信(注3)と超多素子受信レーザ走査2次元マトリクスアレイ(注4)を融合した映像法を開発し、従来限界を1桁以上上回る数千素子の超多素子2次元マトリクスアレイの実現により、固体材料内部の欠陥を3次元的に高分解能で映像化することに成功しました(図1)。これにより、安全?安心な社会の実現や高いレベルでの品質保証による工業製品の国際競争力強化への貢献が期待できます。
本研究の内容は9月17日(米国時間)に、米国物理学協会の学術誌「Applied Physics Letters」に掲載されました。
図1 発電プラントで問題となっている枝分かれ応力腐食割れ(割れ状欠陥の一種)を本研究で開発した3次元超音波映像法PLUS(左)で映像化した結果(右)
【用語説明】
(注1)超音波:人の耳では聞こえない高い周波数(20 kHz以上)の音。周波数が高い程、直進性に優れるが、減衰の影響も大きくなる。金属材料ではMHz領域(106 Hzオーダー)の周波数が利用される。
(注2)超音波フェーズドアレイ:複数の素子を持つアレイセンサとその制御器により、電子スキャンで内部の映像化が可能。医療分野で開発され、近年では工業分野への普及も進みつつある。
(注3)圧電探触子送信:電圧をかけると、伸び縮みする圧電材料から構成される超音波センサ。圧電材料に高周波の電圧信号を加えることで、超音波を送信できる。
(注4)超多素子受信レーザ走査2次元マトリクスアレイ:レーサ振動計を2次元的に走査(スキャン)することで構成される超音波受信センサ。スキャン点数を任意に増やすことができるため、現在普及している圧電アレイ探触子の限界よりも一桁以上多い数千素子の超多素子も実現可能。
問い合わせ先
< 研究に関して >
東北大学大学院工学研究科 材料システム工学専攻 准教授 小原 良和
Tel: 022-795-7358
E-mail:ohara*material.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
< 報道に関して >
東北大学工学研究科情報広報室 担当 沼澤 みどり
Tel: 022-795-5898
E-mail:eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)