2017年 | プレスリリース?研究成果
タンパク質合成の正確性を保証する品質管理の新機構 リボソームに目印をつけて異常タンパク質を分解する新規複合体の発見
発表のポイント
- 正確なタンパク質合成は生命現象の根幹であり、その異常は様々な疾患の原因となる。
- タンパク質合成が途中で停止すると機能に重大な欠損を示すため、品質管理機構によって認識され、排除される必要がある。
- 研究グループは、リボソームに目印をつけ、停滞したリボソームを解消する新規複合体を同定した。
- 本成果は、異常タンパク質の合成を効率的に抑制する治療薬の開発に貢献すると期待される。
概要
東北大学大学院薬学研究科の稲田利文教授と東京都医学総合研究所田中啓二所長、ドイツミュンヘン大学Beckmann博士、米国カリフォルニア大学バークレー校のIngolia博士らのグループは、様々な疾患の原因となる異常タンパク質の合成を抑制する品質管理の分子機構を解明しました。また、新規品質管理因子RQT1が、特異的な翻訳停止状態のリボソームを認識し、リボソームに目印をつけることが品質管理機構に必須であることを見出しました。さらに、目印についたリボソームを認識し、停滞したリボソームを解消する新規複合体を同定しました。
本成果により、細胞の持つ新たな品質管理の仕組みが分子レベルで解明され、遺伝病の原因となる異常タンパク質の合成を効率的に抑制する治療薬の開発に貢献する事が期待されます。
この研究成果は、米国科学誌Nature Communications にオンラインで7月31日に掲載されました。
図 左:連続した特異的コドンを翻訳中に停止したリボソームをRQT1が認識する。中央:RQT1がリボソームの特異的部位をユビキチン化する。右:新規RQT複合体が、ユビキチン化リボソームを認識して、各サブユニットに解離する。60Sサブユニットに結合した合成途上のポリペプチド鎖がプロテソームによって分解される結果、異常タンパク質の合成が抑制される。
問い合わせ先
東北大学大学院薬学研究科
担当 稲田利文、松尾芳隆
電話:022-795-6874, -6876
E-mail:tinada*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)