2013年 | プレスリリース
細胞膜上のアミノ酸トランスポーターを分解する新たな機構を解明~細胞内のアミノ酸量を制御する新たな仕組み~
国立大学法人東北大学は、細胞外からのアミノ酸の取り込みに関わるアミノ酸トランスポーターの新たな品質管理(分解)機構とその生理学的意義の一端を初めて解明しました。これは、東北大学大学院生命科学研究科の松井貴英博士大学院生と福田光則教授による研究成果です。
わたしたちの体を構成する細胞は、蛋白質の部品となるアミノ酸を全て自前で合成している訳ではなく、細胞外からも取り入れています。このアミノ酸の取り込みの役割を担う細胞膜上の蛋白質が「アミノ酸トランスポーター」です。細胞が正しく生存?増殖するためには、細胞膜上のアミノ酸トランスポーターの発現量を維持することが重要と考えられますが、細胞膜と細胞内をリサイクルされるアミノ酸トランスポーターの品質管理の仕組みはこれまで全く解明されていませんでした。今回、研究グループはマウスの胚性線維芽細胞(MEF 細胞)を用いて、細胞膜上のアミノ酸トランスポーターの一種PAT4(パット4)がリサイクリングエンドソームを経由してリソソームで分解されるという新規の品質管理機構を明らかにしました。すなわち、PAT4 は細胞膜と細胞内のリサイクリングエンドソームを行き来するだけでなく、その一部は低分子量G 蛋白質Rab12の作用によりリソソームへと輸送され分解を受けることを突き止めました。このためRab12 を欠損するMEF 細胞では、細胞膜上のPAT4 量が増大し、結果的に細胞内アミノ酸量が増大することが明らかになりました。細胞内アミノ酸量の増大は細胞増殖とも密接な関連があり、PAT4 はがん細胞で発現が上昇していることから、今後、がん治療という観点からRab12 によるPAT4 分解の研究が進展することが期待されます。本研究成果は、欧州分子生物学機構機関誌『EMBO Reports』電子版(2013 年3 月12 日)に掲載される予定です。
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