2012年 | プレスリリース
『メラニン色素』の逆行性輸送の仕組みを解明 ~ 白髪予防の新たな分子標的として期待? ~
国立大学法人東北大学は、メラニン色素が微小管に沿って通常とは逆向きに輸送される「逆行性微小管輸送」の仕組みを初めて解明しました。これは、東北大学大学院生命科学研究科の大林典彦助教、福田光則教授らによる研究成果です。
わたしたちの肌や髪の色の源であるメラニン色素は、「メラノサイト」と呼ばれる特殊な細胞で合成され、「メラノソーム」と呼ばれる細胞内の袋(小胞)に貯蔵されています。メラニン色素を貯蔵したメラノソームは、細胞内に張り巡らされた二種類の交通網、微小管とアクチン線維*1 に沿って細胞膜まで輸送されます。メラノソームはまず、長距離で両方向(順行性?逆行性)に動く微小管輸送により細胞辺縁部へと運ばれ、次に短距離で一方 向にのみ動くアクチン輸送により細胞膜近傍まで輸送されます。メラノソームは最終的に隣接する皮膚や髪の毛を作る細胞(ケラチノサイトや毛母細胞)に受け渡されて、はじめて肌や髪が黒くなります。アクチン輸送に関しては既に低分子量G タンパク質Rab27A による輸送の仕組みが解明されていますが*2、長距離を動くメラノソームの微小管輸送の仕組みはこれまで全く解明されていませんでした。
今回、研究グループはマウスの培養メラノサイトを用いて、メラノソームの逆行性微小管輸送の過程に「Mreg(メラノレギュリン)」を含む輸送複合体*3 が関与していることを突き止めました。Mreg は成熟したメラノソーム上に存在し、RILP と呼ばれるリンカータンパク質を介してモータータンパク質?ダイニンと複合体を形成して、メラノソームを細胞膜周辺から核近傍まで逆行性に輸送することがはじめて明らかになりました。
Rab27A を欠損しメラノソームが核周辺で凝集するメラノサイトで、Mreg 複合体の機能を阻害すると、メラノソームの分布がほぼ回復することから、Mreg の機能を阻害するような薬剤のスクリーニングが進めば、今後、白髪予防につながる可能性が期待できます。
本研究成果は、英国の科学雑誌『The Journal of Cell Science』電子版に掲載されました。
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