2011年 | プレスリリース
電界効果による新超伝導体の開発 (超伝導材料開発手法に新展開)
JST 課題解決型基礎研究の一環として、東京大学 大学院工学系研究科付属 量子相エレクトロニクス研究センターの川崎 雅司 教授(兼 東北大学原子分子材料科学高等 研究機構 連携教授)と、同校大学院総合文化研究科の上野 和紀 准教授らは、材料 の電気の流れやすさを電圧によって制御する電界効果)を用いた独創的な材料開発手法により、新しい超伝導)材料を発見しました。これまでに発見された銅酸化物高温超伝導体などは、電気を流さない絶縁体に不純物を混ぜて電気を流すようにする化学的な手法で作られていました。本研究は、超伝導にならないと思われていた絶縁体を電気的な手法で超伝導にした初めての例です。
電界効果は半導体集積回路のトランジスターとして実用化されており、電圧によって材料に電子などの伝導キャリアを蓄積できます。今回の発見では、イオンを含む液体に浸した固体表面に自発的に形成される電気二重層)を利用した新しいタイプの電界効果により、化学的手法に匹敵する濃度の伝導キャリアを蓄積することに成功しました。超伝導になる物質の候補として、不純物が混じりにくいタンタル酸カリウム)を選び、タンタル1原子あたり0.1個に相当する多量の伝導キャリアを導入することで、絶対温度0.05K以下で電気が流れ続ける超伝導状態を作り出しました。
本研究には、新規超伝導材料開発に新しい道を開拓したという意義があります。従来の手法では超伝導の母材として使えなかったさまざまな材料に超伝導材料開発を広げることで今後、より高い温度で超伝導となる新材料が発見できるものと期待されます。
本研究は、東北大学原子分子材料科学研究機構、同校 大学院理学研究科の協力を得て行なわれ、本研究成果は、2011年5月22日(英国時間)に英国科学雑誌「Nature Nanotechnology」のオンライン版で公開されます。
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
川崎 雅司(カワサキ マサシ)
東京大学 大学院工学系研究科付属 量子相エレクトロニクス研究センター 教授
〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1
TEL:03-5841-6866 FAX: 03-5841-6866
E-mail:kawasaki*ap.t.u-tokyo.ac.jp(*を@に置き換えてください。)
上野 和紀(ウエノ カズノリ)
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 准教授
〒153-8902 東京都目黒区駒場3-8-1
TEL:03-5454-6521 E-mail:ueno*phys.c.u-tokyo.ac.jp(*を@に置き換えてください。)
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