2011年 | プレスリリース
火星起源の隕石中にカンラン石の高圧分解組織を発見
<概要> 東北大学理学研究科の宮原正明研究員、大谷栄治教授、大学院生小澤信(地球惑星物性学分野)は、茨城大学、バイロイト大学(独)、大型放射光施設(SPring-8)との共同研究として、衝撃を受けた火星起源の隕石(Dar al Gani 735)中に、カンラン石(Mg,Fe)2SiO4が高圧?高温条件で、シリケイトペロブスカイトとマグネシオブスタイトに分解した証拠(図1)を世界で初めて発見しました。 カンラン石は地球や火星のマントルを構成する主要物質です。高圧?高温状態のマントル内部では、カンラン石は、シリケイトペロブスカイトとマグネシオブスタイトの二つの鉱物に分解することは、20年以上前から予測されていました。そして、この分解反応は、地球内部のマントル遷移層と下部マントルを区分する660kmの地震波不連続面の原因となっている最も重要な相転移です。しかしながら、この相転移は、実験的に調べられたものであり<補足4参照>、自然界でこの相転移反応の証拠はこれまで見出されてきませんでした。今回、我々は、火星のマントルを代表すると考えられる火星起源隕石中の強い衝撃を受け、高い圧力?温度を経験したカンラン石に、高圧?高温下で生じるこの分解の証拠を、世界で初めて見出しました。今回の発見は、透過型電子顕微鏡や集束イオンビーム加工装置といった東北大学に設置されているナノテク機器を駆使して隕石を調べたことで明らかとなりました。この研究成果は、米国科学アカデミー紀要版(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)に掲載されました。5月22日-27日に幕張で開催される日本地球惑星科学連合2011年大会(幕張メッセ)で詳細な報告がなされることになっています。
〔問い合わせ先〕
東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物性学研究室
研究員 宮原正明 (022-795-6666; miyahara*m.tohoku.ac.jp)
教授 大谷栄治 (022-795-6662; ohtani*m.tohoku.ac.jp)
同研究室秘書 高橋陽子 022-795-6662; ytaka*m.tohoku.ac.jp)