2010年 | 受賞?成果等
絶縁体が金属に変わる新原理の解明
東北大学原子分子材料科学高等研究機構の王 中長 助教、幾原 雄一 教授(東京大学教授兼任)、および川崎 雅司 教授らの研究グループは、高品質酸化物薄膜において「電気が流れにくい絶縁体状態から流れやすい金属状態(高導電性)への遷移機構」を解明しました。これは次世代透明酸化物素子の開発や高性能化につながる成果です。
材料における電気の流れやすさ(導電性)は、「電気を流す担い手(伝導キャリア)注1)が物質中にどれだけ含まれるか」や「伝導キャリアがどれくらいスムーズに動きまわれるか」によって決まってきます。つまり、伝導キャリアの濃度を増やしたり、材料中で伝導キャリアの動きを妨げる原因になる原子配列の乱れ(ひずみや欠陥)を少なくしたりすると、電気はより流れやすくなります。この導電性制御はパソコンや携帯電話に用いられる半導体素子において重要な技術になっています。
本研究では、人工宝石として知られるチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)注2)の絶縁体を用いました。今回、伝導電子を生み出すキャリア供給層をSrTiO3絶縁体間に挟み込んだ「絶縁体層/キャリア供給層/絶縁体層」の層状界面構造をもつ高品質超格子構造注3)を作製し、絶縁体層の体積を増加させると反対に電気が流れやすい金属状態になる現象(導電化)を発見しました。最新の電子顕微鏡技術を用いた原子構造解析と電子状態の理論計算を駆使して、「絶縁体を増加させると界面で結晶のひずみが少なくなり高導電化すること」を解明しました。本成果によって、環境調和した透明酸化物材料に対して導電性制御の手法を新たに確立することが可能であり、超伝導素子や熱電変換素子の開発への貢献が期待できます。
本研究成果は、東北大学金属材料研究所との共同で実施され、11月2日(英国時間)に英国科学誌「Nature Communications(ネイチャーコミュニケーションズ)」のオンライン版に掲載されます。
[問い合わせ先]
着本 享 (ツキモト ススム)
東北大学原子分子材料科学高等研究機構 講師
〒980-8577 宮城県仙台市青葉区片平2−1−1
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E-mail: tsukimoto*wpi-aimr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えて下さい)
幾原 雄一 (イクハラ ユウイチ)
東北大学原子分子材料科学高等研究機構 教授
(東京大学大学院工学系研究科総合研究機構 教授 兼任)
〒980-8577 宮城県仙台市青葉区片平2−1−1
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E-mail: ikuhara*sigma.t.u-tokyo.ac.jp(*を@に置き換えて下さい)
川崎 雅司 (カワサキ マサシ)
東北大学原子分子材料科学高等研究機構 教授
〒980-8577 宮城県仙台市青葉区片平2−1−1
Tel: 022-215-2085 Fax: 022-215-2086
E-mail: kawasaki*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えて下さい)