2017年6月30日 第141回サイエンスカフェ
地球の熱を使ってみよう~超臨界地熱資源から温泉水素発電まで~
講師:土屋 範芳 東北大学環境科学研究科 教授
プロフィール
東北大学工学部資源工学科卒。日本南極地域観測隊員として南極に行く(第31次(1989-1990)、 第35次(1993-1994))、第51次隊(2009-2010)ではセール?ロンダーネ山地地学調査隊長。その他,南アフリカ、モンゴル、カムチャッカ半島 などの地質調査を行う。テント暮らしを好む。南極では風呂に入らなかったが、地熱調査では、もちろん、温泉好き。岩石と流体の相互作用についての研究を進め、現在は超臨界地熱資源に関する研究を行っている。
開催情報
開催日:2017年6月30日(金)18:00~19:45
会場 : せんだいメディアテーク
概要
400℃を越える非常に高温の地熱資源から、身近な温泉の熱まで、地球の熱にはさまざまなものがあります。熱機関としての地球、そしてその地球の熱エネルギー「地熱」の有効な使い方について考えてみましょう。
Q&A
Q.「水素を溜める塩」は車のバッテリーやスマートフォンの電池のように何度も使用することで、溜める量は少なくなっていくのでしょうか?
A.材料や溜(貯)め方によっても違いますが、現状の技術ではやはり溜める量は徐々に少なくなる(劣化する)と思います。劣化を防ぐ研究も重要です.
Q.コスト面での費用はどうなのだろうか。地熱の再利用は無限だしこれからは有効であると思う。
A.コストをどう考えるかによります.単純な建設費なのか,ランニングコストはどう考えるのか,将来にわたるリスクをどう考えるか,エネルギーの安全保障という観点でのコストをどう考えるか,コストの考え方で,エネルギーの価値も変わってきます.
しかし質問の趣旨は,要するに安いの,高いの,どっちなの,という意味かもしれません.そんなに単純ではないよと言いたいところですが,素朴な疑問への答えとしては,現時点で地熱はややわり高です.
Q.2003年に予算が減らされたのはなぜでしょうか。
A.この理由ははっきりとはしていませんが,「地熱」は,既に開発されたエネルギーであり,国に頼らず,後は民間ベースで開発を進めなさいという国のメッセージだと思います.
Q.過程で簡単にできる水素蓄積法(構築法)があれば、災害に備えて教えてほしいです。
A.たぶん,’家庭’のミスタイプですね.
残念ながらちょっとすぐには思い浮かびません.
非常時に備えてエネルギーを蓄えるというのはそう簡単ではありません.いろいろ知恵を絞っていく必要があります.今回紹介した温泉他による水素製造はそのひとつの解決策と思っています.
Q.どこに井戸を試掘するのか。
A.どこに井戸を掘るかは,まだ決まっていません.
科学や技術だけでなく,さまざまな関係者(ステークホルダー)の合意により決まっていくものと考えています.
当日の様子